始まりますな……この街が犯し続けた血まみれの怠惰……その全てを精算する闘争が。
国連管理都市ミリオポリス。〈猋〉遊撃小隊所属の三人の少女、涼月、陽炎、夕霧は、警察組織 MPB の指示の元、凶悪犯罪者たちを撃滅する。失われた生身の肉体の代わりに与えられた、機械の四肢。残酷な世界の中、少女たちは闘い続ける。
「なんか世界とか救いてぇ――……」そんな涼月の一言で始まる物語。同一世界を別視点で描いた『スプライトシュピーゲル』とは、設定が一緒なのに随分と受ける印象が違うなあと言うのは、やはりキャラクターの内面にかなり踏み込んだ描写がされているからなのかな。
特甲を与えられる彼女たちの過去は、どれもこれも重いものなのは変わらないけれど、そこに混じる主観の多寡で随分と移入してしまうなあ。
1巻目の構成は、どちらも似た感じで、キャラクターの紹介を兼任したそれぞれの過去話を含めたエピソード。壊れそうな過去を持ちながらも、今も闘い続ける彼女たちの、それぞれの理由というのは、やっぱり世界の悲惨さを反映しているような。
そして、プリンチップ社製の武器を携え、〈猋〉の前に立ちはだかるのは、生身の人間。そこが、『スプライトシュピーゲル』とは大きく違うのかなあと。ばたばたと人が死んでいくし、大変なことになってるし、その辺の潔さというか、殺伐さというか、そんなところが、本作の方向性なんですかね。
hReview by ゆーいち , 2008/06/25

- オイレンシュピーゲル 1 (1) (角川スニーカー文庫 200-1)
- 冲方 丁
- 角川書店 2007-01
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