僕は消えたりなんかしない。無実を証明して、本当の犯人を見つけて、知らせに戻る。
複数の高官暗殺。大型兵器の都市流入。広範囲にわたる襲撃。ウィルスに電子テロ計画……。まさにすさまじいとしか言いようのないテロ計画が24時間以内に実行に移されるという情報を入手した MSS は行動を開始する。しかし、その情報を重視しない、あるいは MSS の行動を嫌忌する者たちの思惑で、すべては後手に回っていく。そして、ついにテロが始まる。内務大臣暗殺から広く速く、あらゆる方向へ。
絶体絶命の窮地の連続。組織としての体をなさなくなりつつある MSS の中で、満足な支援も受けられずに、しかし、互いの絆を拠り所として闘い続ける特甲児童たちの姿がとにかく熱い。影の薄かった一般人代表な感じの冬真も、彼なりの戦い方を見つけて、そして、その存在がどれだけ凰、乙、雛らの特甲児童にとって、かけがえのないものになりつつあるかが分かったエピソード。
そして、大人たちの世界、政治の世界はまさに伏魔殿。敵と味方が入り交じり、お互いの隙を窺うミリオポリスの上層部と、そこにまさに悪魔のごとく潜り込んでくるリヒャルト・トラクルの思惑。全世界的な動乱の種が蒔かれてしまったように思うのですが、ここからどんな世界が広がっていくのやら。物語の結末は、ひとまずの動乱の収束を思わせますが、決してそれで終わりではなく、また新たな戦いが呼び込まれることは間違いないですしね。
どんな組織にもほころびはあって、そして人の心は機械ではないから、だから今回のような事件が起こり、身体だけでなく、心にも傷を残して収束して行くわけで。その傷が癒える間もなく、立て続けにこんな事件が起こるとしたら、それはどれほどの苦痛なのか、まだ幼ささえ残る子どもたちにとって、この世界の生きづらさはあまりに過酷なのだなあと再認識。
救いはないけれど、絆はある。それを縁にただ飛び続ける彼女たちの姿は、大人たちにどんな風に見えるのか。
hReview by ゆーいち , 2008/06/29
- スプライトシュピーゲル 3 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
- 冲方 丁
- 富士見書房 2007-11-01
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