戦場のエミリー―鉄球姫エミリー第四幕

2013年4月18日

stars 待ちわびたか! 恋しかったか! グレン!!

ラゲーネン王国を揺るがす惨劇が起きた。ガスパール王の暗殺に大きく揺れる王国。進行するヴェルンスト王国は着実にラゲーネンに迫り、そして国内では半島派諸侯が反旗を翻す。弟を失ったエミリーは絶望に打ちのめされ、父を失ったグレンは自らの無力を痛感しながらも何かを成すために戦場へと向かう。大切なものを守ることのできなかったエミリーは、このままま何もできずに終わってしまうのか。

前巻のラストでまさに衝撃の展開だったわけですが、今回はそこから生まれた波乱がこれでもかとエミリーやグレンを翻弄してくれますね。

奔放に見えて、けれど、身内をこれ以上失いたくないと願っていたエミリーの望みは、またしても裏切られ、ただの弱い少女な側面が描かれました。そして、グレンも彼が特別な存在でも何でもなく、ただ、状況に流されるしかできない、そんなことを自覚しつつも、けれど立ち止まることを良しとせず戦場へと向かう。対照的なふたりの生き方、弱いエミリーと強いグレンという、これまでとは逆の描かれ方をしていますね。

何も失いたくないから何もしないという選択をしたエミリーを叱咤するロッティもそうだし、グレンの思いを汲んで付き合うことを選んだリカードもそう。彼らの側にいる彼らの大切なひとたちは、こういう極限下でこそ支えてくれるから、彼らに守りたいと思わせる、そんな当たり前だけど見えていなかったことに、ようやく気付くことができたでしょうか。

戦況は悪化の一途。グレンの信じていた兄の裏切りが露呈するし、ラゲーネンを蹂躙する血風姫の軍勢は太刀打ちできるのかと思えるほどの強さ。最後の最後まで戦い抜くことを決意したグレンとエミリーの運命はこれからも過酷だろうけれど、生き抜いてほしいなあ。

hReview by ゆーいち , 2008/08/03