マージナル〈4〉

stars 御笠さん、納得してくれとは言いません。しかし、これが我々という生き物です。

自らが君臨してきた「ブラッディユートピア」から撤退を決めたヴェルツェーニ=摩弥京也は、最も信頼を置いていたスターマインにその後継を委ねた。そして、事件は起こる。かつてない規模で全国で発生した連続爆破テロ事件。一部で「ヴェルツェーニ事件」と呼ばれることとなるこの事件に、京也と御笠は否応なしに巻き込まれていく。

おお、なんか面白かった。なんか過剰に現代社会、ネット社会の暗部を拡大して演出してるような気はするけれど、確かに現状のネットで散見する愉快犯とかを見ると、こんなバカが出てきてもおかしくないとか思ってしまう。

自身の闇であるヴェルツェーニとの決別を決意した京也の前に現れたのは、新たなるヴェルツェーニ。自らが操ってきた、ブラッディユートピアの総力を自身に向けられ、そして圧倒的な力で京也を追い詰めてくるヴェルツェーニ。組織対個人という絶望的なまでに劣勢な状況に、敗北し続け、膝を着いてしまう京也。これまでのように京也が持っていた余裕が一切なくなり負けを認めてしまうというのは、結構意外。まぁ、そこから立ち直らせたの御笠の存在が、彼の中で大きくなっていたという、そのために、彼は弱くなり、また強くなったという風にも思えましたが。

そんな御笠も今回は思いきり矢面に立たされ、危機的状況に。というか、ラストシーンが1巻のリフレインなんですが、これ、御笠自身の状態が明かされないままに物語が終わっているので、その辺が次巻で問題になってきそうですね。御笠が立てた、姉の敵を討つという目的が、今回は棚上げされているので、それがこのシリーズのラストエピソードとなりそうな気がします。

京也自身も、このエピソードでついに一線を越えてしまい、もはや留まっていることができなくなりましたね。彼の存在の本質が、ヴェルツェーニへとぶれるのか、京也へと戻るのか、それが今後の物語で大きな意味を持ってきそうです。

hReview by ゆーいち , 2008/08/19

マージナル 4

マージナル 4 (ガガガ文庫 か 1-4)
神崎 紫電
小学館 2008-08-20