セキララ!!〈2〉

2013年4月18日

stars 世の中に、『やればできる』なんてことは、ひとつもないんだよ? どんなことだって、『やらなきゃできない』んだよ?

自らの黒歴史でもある小説『邪王戦聖記』の世界から現実にやって来た火琉奈。『邪』である邪樹を退け、一件落着と思いきや、火琉奈はそのまま拓巳の元に残ってしまう。恋人の桜からは冷たい目で見られるわ、親からは怪しまれるわ、この先いったいどうすれば……。そして、ついに次なる敵が現れる。桜に気安く近づいて来た謎の男。もしかして、あれは『サクラの婚約者』にして殺人鬼の……?

[tegaki]イタタタタタタタ!!![/tegaki]

自作小説から現れたキャラクターの言動と、それによって思い出した過去のイタい行動に苦しめられた前巻とは、また違った痛さに襲われますね。

小説の展開を全て知る作者だからこそできるチート行為で火琉奈を強化した拓巳たち。次に現れた敵キャラを打倒するために万全の準備で望もうとするけれど、そればかりにかかずらっているわけにはいかなくて。

自分がなりたい自分と現実とのギャップに苦しめられ、周囲の人間たちが特別に見えて、自分にはなにもないと錯覚してしまう拓巳。けれど、作者の特権を使って誰にもできない方法で『邪』と戦うことができたことから、勘違いしていって、ついに爆弾が炸裂。桜との関係がぎくしゃくしていたところに、止めとばかりに投下されたこの取り返しの付かない行動。端から見てもそうだし、冷静になってしまった拓巳自身も自分を消してしまいたいくらいに恥ずかしくて、そしてそれ以上にどうしようもなく逃げたい大失態を犯してしまいましたね。

桜との関係も、ここで結構厳しいものになってしまったし、彼女と近づくきっかけになったバンドのメンバーとの意識の違いも、これから尾を引いてくるのかも。そして、何よりも、社会的に抹殺されかねない窮地に陥ってるんだけれど、ここからのリカバリー、どうするんだろう……。

さらには、物語自体も、なんだか本格的にファンタジーに移行しそうな雰囲気。イタい物語を題材にした物語、それ自体が、イタいお話になってしまいかねないけれど、これは、作中作の登場人物と、その作者との対決とかいうメタな展開になっていくのかな?

hReview by ゆーいち , 2008/09/03

セキララ!! 2

セキララ!! 2 (ファミ通文庫 は 3-1-2)
花谷 敏嗣
エンターブレイン 2008-08-30