けど、どうしようもないんだ。どうしようもなく、僕はミオと一緒にいたいんだ。
目覚めたときに最初に見えたのは白い天井だった。自分のものとは思えないような身体に違和を感じるカズヤの前で涙を流すミオ。断絶は広がっていた。葛峰聖と昂のふたりによって、カズヤとミオの間に打ち込まれた楔は、綻びを生み、そして起こってしまった事故。それはカズヤから、ミオと恋人として過ごした3ヶ月という時間すら奪っていた。
カズヤとミオの物語はいったんここで完結、ということで、最後はきれいに締めてくれましたね。
そこに至るまでの展開は、痛みにまみれていて、カズヤとミオの間に生まれたわだかまりだったり不信だったりの解決方法としては、こうやって腹を割って本音でぶつかる、なんて青臭い形をしか、彼らは選択できなかったのかな。
ふたりの前に現れた、聖と昂という、まるでカズヤとミオが辿るはずだった未来を、救われることなく迎えてしまった双子により、引っかき回されてしまった形になりましたが、聖と昂にとっても、この物語の中で、カズヤたちが選択した未来というのは、これまで絶望でしかなかった生と、許されない死というものに、ほんの少しの希望をもたらしてくれたのでしょうか。やってることは底意地悪いし、悪趣味だし、いい迷惑だけれど、その結果として、互いの存在に、そして自分自身に不安と猜疑を抱いていた、カズヤとミオに幸せな結末をもたらしたということは、皮肉ながらも祝福してあげたいかなと。
B.R.A.I.N.complex なんて SF 要素が物語の基幹にあるようでいて、結局終わってみると、この物語は、お互いを、そして不確かな自分に不安を抱いていた、カズヤとミオがその先にある形ない何かを手に入れる、心の物語だったのかも。出会って喧嘩して、恋の障害が現れて、仲直りして、結ばれて、結局はそれは、多分どこにでもある、けれどふたりだけの物語。
hReview by ゆーいち , 2008/09/06
- カッティング~Case of Mio Reincarnation~ (HJ文庫 は 1-1-4)
- 翅田大介
- ホビージャパン 2008-09-01
コメント