この世界に絶対なんて存在しないって、誰かが言ってたな。けど、この絶対だけは絶対だ。
赤司世郎は縹琉璃緒により、体内に何かを埋め込まれた。それは
スタンダードな巻き込まれ型の異能バトルだなあといった印象。背景には数百年に渡る、二つの勢力の対立の構図があるわけだけれど、実際のところそれが、世郎の身に降りかかった不運とどれくらい関わり合いがあるかというと、本当に運が悪かったという、そんなレベルで。けど、そんな世郎が、希有な能力を有していたっていうのは、お約束かな。
世郎は平凡を自称しつつも、戦いしか知らない少女・ルルーラの、傷つきながらもそれしかないという生き方をする彼女を、放っておけないくらいの熱さはしっかりと持っていて、なし崩し的に師弟関係を結んだふたりだけれど、おっかなびっくりな態度で世郎に接するルルーラの不器用さと、師を師と思わないような気軽さで「普通」に接する世郎の態度の対比は面白いですね。
そこに絡んでくるルルーラの従者・ヴィオレータの毒舌さと、ルルーラに向けるひたすらな献身と、まるで姉のような親愛。たったふたりの家族の中に、世郎がどうやって溶け込んでいって、互いの信頼を築けたのかは読んでのお楽しみ。にしても、彼女の毒吐きは容赦がないからハタから見ている分には楽しいけれど直接向けられたらヘコむよなあ、だからこそ会話のテンションも高いわけですが。
そして、結果的に対立することになった『王者の法』にしても、今回のは敵役の独断みたいな感じで、組織との対決、という感じはしなかったわけですが。冒頭でインパクトのある登場をしつつ、後半は空気だった琉璃緒の再登場の機会はあるのか? そして、二つの勢力のいずれにも貴重な存在っぽい世郎の今後の身の振り方はどうなるのか? ラストは割とほのぼのとした感じで気持ちの良い終わり方でしたが、彼らの置かれた立場はなかなかにデンジャラスな感じ、この先どうなっていくのやら、続き、出ますよね?
hReview by ゆーいち , 2008/09/25
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