だったら、今度は考えて行動しなさい。償えない罪をそれでも償おうとし、それから死ねばいい!
エリダナの街は混沌としている。職を失った労働者達の暴動と、投資家を狙うという不穏な空気。そして、龍皇国の周囲で起きる小国の内部紛争とそこから飛び火する戦争の危機。そんな中、ガユスの恋人・ジヴは、瀕死の男から指輪と言葉を託される。それを受け取るべく現れる、北方の堕ちた勇者・ウォルロットと、それを狙う
完全新作の長編がついに刊行。時系列的にどうなってるのかなあ? 角川版のアナピヤのエピソードとかはなかったことになるのか、あるいは形を変えて接続されるのか。
とにもかくにも、前編です。もう、この時点でガユスはぼろぼろという感じ。身も心も救われないまま、それでも戦うしかないという。相変わらず不幸が服を着て歩いているような男です。
今回はジヴが大きな鍵を握ってますね。麻薬に溺れ、廃人寸前ながらも圧倒的な実力を持つウォルロットを御してみせたり、ガユスと見えない繋がりを感じさせてみせたり。だけど、この終盤の展開はいったいどういう……。これは、ガユス捨てられ展開? 前半の甘い恋人同士のやりとりが幻のように……。前シリーズでは、ガユスが妹のことを引きずっていたり、アナピヤやクエロなど女関係でジヴを不安にさせたせいで破局した感じだけれど、この展開だとジヴが自らウォルロットを選んだかのように見えてしまって。あるいは、後編でよりを戻して、そして止めとばかりに破局展開へ持っていくのかもしれないですが。
そして、今回の敵〈古き巨人〉は竜や禍ツ式に負けず劣らずの凶悪さ。というか文字通りビル並の大きさの巨人相手に人間がどう戦うのかと。その巨大さから感じられる絶望感は、かつてなかったかも。彼らの目的も謎のままだし、モルディーンが話を回している政治の部分でも、この陰謀に突き当たりそうだし、最後にはあらゆる陰謀が収束し大変なことになりそうですね。
あと、やけに派遣労働者の悲哀が描かれてるんですが、これは何かの伏線でしょうか。定められた犠牲として切り捨てられる少なからざる人びとの上に生きている投資家・ダリオネートとの対面と彼から受け取ったものが物語に絡んできそうだけれど、経済とう流れの犠牲になった人たちの描写はきっついですね。今の日本を投影してる感じだけれど、必要だったのかなあ、ちょっと違和感がありました。
話のスケールは、ここに来て一気に拡大してきてますが、こんな抗えざる流れの中で、ガユスとギギナがどんな役割を演じるのか、演じさせられるのか、そして、今回のエピソードの結末がどれだけ絶望にまみれるのか、次巻が楽しみです。
hReview by ゆーいち , 2008/09/28
- されど罪人は竜と踊る 3~Silverdawn Goldendusk~ (ガガガ文庫 あ 2-3)
- 浅井ラボ
- 小学館 2008-09-19
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