……ここか。ここが僕らの世界ですか、刈谷先輩。
新年を迎え、階段部三年生の九重と刈谷の引退がいよいよ間近に迫ってきた。そんな中、次期部長を決めるため、残る部員4人による総当たりの階段レースが行われることとなった。自分の理想を追い求めるため、自分の想いを伝えるため、自分の強さを確かめるため、それぞれがそれぞれの目標へ向かうためにレースへと臨む。
毎回、誰かにスポットを当て物語が進みますが、今回は空回り気味な部活メンバー・井筒のターン!
彼の空元気で滑りがちなキャラクターと、それに反したかのような、ゆうこに向けるひたむきな恋心が、過去のエピソードによって語られます。そして、一世一代の舞台となる、部長決定戦を経て、井筒は自分の想いを、ゆうこにどのように伝えるのか、といったお話ですね。
そして、生徒会長となり、波佐間とのレースを経て、幸宏もまた変わりつつあるようです。作中を通して、彼が階段部での活動を通して見ている世界がゆっくりと変わって行っているかのような印象。彼が見る世界を理解できているのは、現時点では刈谷だけのようで、けれど、そんな幸宏の危うさは階段部の面々も気づいていて。泉が、幸宏に対して抱いていた危惧が、現実になりそうな展開なだけに、これまで山あり谷ありながら結束を保っていた階段部が、三年生の卒業と新部長の決定を機に、人間関係が歪んでいくような予感を抱きます。
物語的にはようやく幸宏が走ること、その抗えざる衝動の正体を見据え、覚醒した感じでいよいよクライマックス? 刈谷との真剣勝負の向こうに、どんな世界が広がっているのか、そこが何もない絶壁などではなく、さらに高みを目指すことのできる世界であればと思いますね。
で、華麗にスルーしてますが、幸宏を巡る恋愛バトルも加熱してる感じ。彼の与り知らぬところで、バチバチやってますなあ。美冬との微妙な距離感が微笑ましくて好きなんですが、他の女性陣もそろそろ本気モードっぽいですし、いったい誰が彼の心に入り込んでいくんでしょうね?
hReview by ゆーいち , 2008/11/04
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