ライタークロイス〈5〉

2008年12月14日

stars 僕は、騎士としてもそうありたいんだ。守りたいものを、守れる騎士に。

帝都での叛乱鎮圧の功労により、カインは騎士として叙されることとなった。その喜びを味わう間もなく、カインはファリアより、彼が皇女としてのファリアの婚約者候補となったことを告げられる。そんな中、カインに持たれるインフェリアへの内通疑惑、時を同じくしてイングリドが何者かに攫われて……。

[tegaki]ここで終わるなんて、もったいない![/tegaki]

ああああ……地味ながらもそこに描かれるカインたちの物語が、巻が進むにつれて好きになっていっただけに、それが突然こんな形で完結してしまうのは残念で仕方ないです。打ち切りに近い感じを受けますが、それでも、本当に守りたいものを見つけ、思い描いていた理想の騎士をめざし、そこへ至るという、彼自身の物語に一応の決着を見せてくれました。

たびたび火花を散らしていた、イングリドとファリアのカインを巡る三角関係も、ファリアの婚約者候補となり、そしてイングリドの誘拐という事件を解決する中で、カイン自身が自分の答えを出して決着を付ける、これも今どきの優柔不断な主人公とは違って、成長が感じられた答えではないでしょうか。

それにしても、返す返すも残念です。世界の秘密などが少しずつ明かされて、これから国家を揺るがすような大事件が起きそうな予感を覚えていた展開だけに。帝都とインフェリアの、騎士勲章を巡る策謀劇とか、人間を脅かす魔物の正体が実は……、とか、これからいくらでも盛り上げられる伏線があったのに、これから先の物語が見られないのは寂しすぎますね。

この世界でのカインの物語が完結したとしても、また別の主人公の視点から、この世界の、この先の物語を見せてほしいと思いますね。

hReview by ゆーいち , 2008/12/06