俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈2〉

2008年12月14日

stars けどな、誰にだっているだろうよ、そういうふうに想えるやつが! 別れがたいやつが! 一緒にいられなくなるなんて、考えたくもないやつがさあ!

窮地を救ってやった恩など忘れたかのように、俺の妹・桐乃の横暴な“人生相談”はまだまだ続いている。やれ「エロゲー速攻クリアしろ」だの「不快にした責任とりなさい」だの、あのとき見た笑顔はやっぱり俺の錯覚だったとしか思えない、そうに違いない。そして、夏休み。仕事に部活に忙しい桐乃が、俺に下した命令は「夏の想い出作り」とやら。こいつが喜びそうなイベントって、このなんたらマーケットってヤツだよなあ……?

[tegaki]兄・カミングアウトす![/tegaki]

あああああ……、京介、なにやってんだあああああ(笑)

前巻のラストも大概な展開で笑わせてもらいましたが、今回はそれに輪をかけて自爆してます、このお兄ちゃん。なんだかんだで妹のために一肌も二肌も脱ぐ素直になれないツンな兄ですが、ついに危険な一線を自ら乗り越えてこようとはっ!!

もう、序盤~中盤の桐乃の人生相談から生まれる、まったりとした充実オタクライフの描写なんてすっ飛んで、怒濤の終盤がすごいすごい。なんというか、ここに一般人と逸般人の隔絶が凝縮されてるんじゃないかって気がしてなりません。

相変わらず、一般人的目線から見たオタクの、キャラのセリフを借りたバッシングにも似た痛烈な言葉は身につまされて痛いのですが、なんだか今回は時事ネタが絡んでるような。オタク趣味に対するバッシングと、それに対する反論というのは、今回の物語の展開として避けられないものでしたが、どうにもリアルな世界でそういうのを見ているせいか、フィクションの中でも同じ論法を見せられるのはちょっと微妙な気がしてしまったり。自分で自分を擁護してるような印象を持ってしまったんですが、そういうお話ですからねえ。しかし、そのネタを調べ上げたのが、前巻のラスボス、巌のごとき実父ってのが皮肉ですが、なんだか和みますね。良い家族じゃん、高坂家。

そして、界隈の話題をかっさらったネタも満載。さすがに2冊目となると、その驚きよりも、ネタのチョイスに唸ったり苦笑したり感心したりと。インタビュー見てもなかなかにフリーダムな感じで執筆してるみたいですねえ。さて、次はどんなネタが飛び出すのか。

幼なじみの田中さんちの麻奈美さんは、前巻では影薄かったけど、今回はちょっとプッシュがあったかなあ。京介との関係は、まさに、ザ・幼なじみ、って感じで京介の彼女に対する近すぎるがゆえの恋愛感情と認識できないような微妙な感情が良かったです。てか、ホントに羨ましくて妬ましい……ギギギ。

今回のラスボスは、ある意味、親バレよりもキッツイ親友バレ。あやせさんヤンデルよ、あやせさん。作中資料の設定が、まさか後半のネタに繋がっていたとは! そして、微妙に変なフラグが立っていますねえ。京介の毒牙から、愛する親友・桐乃を助けるためにあやせが暗躍するスピンオフ作品『わたしの親友が実兄を愛しているわけがない』を誰か書いて!

ただ、物語の構造は前巻と同じだし、話題性に乗っかって、その勢いのまま突っ走ってる印象があるのも事実でしたね。そういった意味では前巻ほどの楽しさはなかったかもしれません。

あとがきにあるように、次の巻でどういう風にテコ入れしてくれるか、そこに期待です。でも、展開的には次は同人誌作成でもするのかな……?

hReview by ゆーいち , 2008/12/10

俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈2〉

俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈2〉 (電撃文庫)
伏見 つかさ
アスキーメディアワークス 2008-12-05