C3‐シーキューブ〈5〉

2008年12月14日

stars それでも一応、見せてもらう必要はあると思うんだよ――証拠というやつを、さ。

体育祭に続いての大イベント・文化祭が私立大秋高校で開催されている。春亮やフィアたちのクラスが出展しているナース喫茶も、古今東西のナース服(?)の共演のおかげか大繁盛。初めての文化祭、初めてのおしごとに浮かれるフィア。しかし、その喧噪に紛れるかのように校内には怪しげな人物が侵入、その目的とは……?

[tegaki]いんちょーさんラヴ!![/tegaki]

いや、表紙のフィアも、このはのえろナースも良いのですが、今回は錐霞さんのターン! 隙を付いて○○まで持っていって、春亮を巡る女の戦いは、これからどんどん激化していきそうですね。

さて、数巻に渡って続いてきたビブオーリオ家族会との因縁に続いて、今回はさらに別勢力・研究室長国トップの闇曲拍明も登場。禍具を研究の対象としてひたすらに情熱を注ぐ彼の姿は、それを家族として愛することを信条とした家族会のアリスとはまた違った狂気を感じさせます。そんな拍明は錐霞の実兄であり、しかし彼の興味と知的好奇心は、そんな肉親の情などないかのようにあくまで研究対象として彼女を見ている。そういった意味で、これまで敵対してきた家族会とは正反対の意味で、禍具を扱う勢力であるといえるのでしょうか。

物語的には、ここで一段落が付いたような印象を受けます。家族会は事実上消滅。研究室長国もしばらくは静観を決め、あとは不穏な動きをしそうなのは未だ不明な竜頭師団と、蒐集戦線騎士領ですが、後者はすでに忘れられていそうな……。

まぁ、それはともかく、禍具の中でも特異な存在であるフィアと、それ以上に特異な人間・春亮の周囲には、これからまた別の思惑を持って各勢力が接近してきそうですね。少しずつ人間に近づいていくフィア、そして人間らしい感情を得ていくフィア。彼女が憧れる人間の、まだ知らない感情を得始めたフィアが、春亮と錐霞のあの行為の意味を知り、そしてそれに抱いた自分の胸の痛みの意味を知ったとき、どう変わっていくのでしょう。そういった意味でもこれまで以上に春亮を中心とした人間関係は混迷を極めていきそうですね。

今回は、水瀬作品にしては割と救いのある展開で意外といえば意外でしたね。前巻が後味が悪かっただけに、今回の家族会の生き残りに与えられた結末は、前向きに思えるものでした。再登場したとすると大変なことになりそうなので、彼女たちには別の場所で、静かな幸福がこれからもたらされることを祈りたいところです。

にしても、やっぱり今回のエピソードでいんちょーさんが一歩リードした感じ。フィアに芽生えた自覚ない恋ごころの行方とあわせて、春亮と彼女たちの多角関係がどう移ろっていくのか、それにも注目ですね。

hReview by ゆーいち , 2008/12/11

C3‐シーキューブ〈5〉

C3‐シーキューブ〈5〉 (電撃文庫)
水瀬 葉月
アスキーメディアワークス 2008-12-05