アカイロ/ロマンス〈2〉 ―少女の恋、少女の病

stars こわいですか? わたしのことが? それとも、このからだが? あるいは、このきずをつけたものが?

枯葉との出会いから一週間が過ぎた。枯葉に再び迷い家へと招待された景介は、そこで新たな一族の少女・型羽を紹介される。人間に対し、大きな猜疑心を抱く型羽と打ち解けることができぬままの帰路。景介は繁栄派に属する者たちの襲撃を受ける。枯葉から向けられる感情、今はもう応えることのできない灰原の想い。ふたつの気持ちに対し、向かい合うための答えを見つけられぬまま、景介は再び鈴鹿の一族の内乱に巻き込まれていく。

新たに登場した人間を恐れ、あるいは憎み、信用しようとしない一族の少女・型羽。彼女の身に刻まれている痕こそが、人間と鈴鹿の一族の間に横たわる溝の深さを象徴しているかのよう。一方的に虐げられ、緩やかに追いやられていくことをよしとしない繁栄派はそれを乗り越えるため手段を選ばず、一方の枯葉たちはそれを受け入れ、ともに生きる道を探ろうとしている。けれど、そのどちらの勢力の内部にも、その考えに準じない者もいるようで、そういった思惑が絡み合って、今後どんな展開になっていくのかも気になりますね。

枯葉の中に息づいている景介への想いは、ここに来てようやく彼女自身の気持ちとして彼女の中に根付いたよう。灰原の件があるだけに、その気持ちを受け入れることができない景介と、それを知っていても、自分の気持ちを曲げようとしない枯葉。なんとも不器用で、景介が性悪なだけにその想いが通じるまでにはまだまだ時間がかかりそうですが、彼が今回の物語で最後に下した決断と、自らの立ち位置の表明は、自分からも少しずつ彼女の側に歩み寄ろうという、一歩の踏み出しに思えますね。報われなかった灰原の想いを身体の内に抱えたままの枯葉と景介、この三人の関係が報われる日が来るのやら。どうにも、雰囲気的に簡単にハッピーエンドなんて許されない感じがしますからねえ。

一族の宝刀「つうれん」を巡る対立が、物語の軸となっていますが、結果的に、その半々を互いが所有することになったラスト。枯葉のあまりと言えばあまりな魔怪造っぷりに、一族の始祖も草葉の陰で涙を流してるような気がしますが、和服の枯葉が手に持つ凶悪な工業製品、なんともミスマッチで、だからこそのインパクトがありますね。……しかし、これ、再び全部そろえたらどうやって元に戻すつもりなんだろう。

そして、げに恐ろしきは人間かな。いやぁ、最後の最後でしてやられたなあ。そのための伏線がいろいろ張られていましたが、それを踏まえて、彼女の病み具合が半端ないことに、登場人物の大部分が気付けていないという現状。当面、景介たちの前に立ちはだかることになるであろう敵の本性を知ったとき、景介は敵を敵として討つ覚悟を抱き続けることができるのでしょうか?

相変わらず、藤原祐の描く物語は、ささやかな幸福をちらつかせておいて、その直後に思いっきり落とすなあ。直接的なグロテスクさはこれまでのシリーズに比べれば少ないけれど、その分、人間が内に抱える狂気とか、人間であるが故の残酷さ、黒い側面をこれでもかと見せてくれますね。

hReview by ゆーいち , 2008/12/15

アカイロ/ロマンス 2 ―少女の恋、少女の病

アカイロ/ロマンス 2 ―少女の恋、少女の病 (2) (電撃文庫 ふ 7-17)
藤原 祐
アスキーメディアワークス 2008-12-05