とらドラ・スピンオフ2! 虎、肥ゆる秋

stars 大河……こうなったらもう、しょうがねえだろ。わかるな……ダイエットだ。俺も付き合う。一緒にやる。俺にはその責任が、ある!

食欲の秋! いっそう増進する欲望を抑えることもできず、大河は肥えた。目を背けてきた現実を、竜児や実乃梨、亜美、あげくの果てに北村にまで指摘され、大河は一念発起、ダイエットへと挑む! 初体験のジムで大河たちを待ち受けているものとは……!? 電撃文庫MAGAZINE 掲載の短編を収録したスピンオフ第2弾。独身(30)の悲しくも心打つ過去も明らかに!

本編がひたすら重苦しい展開になり、次が待たれるところですが、箸休め的に軽いエピソードでもどーぞな短編集。

大河と竜児の関係が近づききっていない季節の、微妙な距離間。竜児は大河の面倒を見ることを使命と信じ、大河は竜児を下僕扱いしていた頃の、騒がしくも楽しい、懐かしき日々。必死にダイエットに挑んだり、ヘアスタイルの変更に苦悩したり、実りの秋に収穫作業にいそしんだりと、それほど特別でもなく、けれどだからこそ愛しく思える日常の姿。ああ、こういう短編集なら大歓迎かなあ。逆に本編が終了した後にこういうエピソードが語られたら、もっと切なくなってしまいそうですし。

そして、本編ではこれでもかとそのバカさを誇る春田のエピソードと、不幸を体現したかのような独身(30)のお話が、輪をかけて素敵。

いや、どちらも妙に生々しい恋愛観や仕事観に彩られていて、楽しさとはまた違った方向のお話でしたね。

本編ではなかなか顔と名前が一致しなかった脇役程度の認識しかしていなかった春田の、こういうエピソードを見てしまうと、少し見る目を変えてしまいますねえ。バカだからこその核心を突いた物言いで愚直にぶつかり続ける春田の姿に驚かされたり。終盤の春田の言葉はきっついなあ。子どもの視点からの、大人の恋愛へのアンチテーゼにも見えて、そしてなんだか、これからの本編の重苦しさを暗示しているような気もして。

そして、書き下ろしの独身(30)の話もまた素晴らしい出来。というか、彼女が送ってきた教師生活の艱難辛苦さの一端が感じられるというか、昔っから男運がなかったのか……。でも、こういう経験を積んできたからこそ伝えられる言葉が生まれてるんだろうな。だんだんと株を上げてきてる彼女に、春が訪れる日は来るのか? いや、ホント、いい先生だと思いますよ。

そんな素敵な短編集。いやいや、堪能させてもらいました。

hReview by ゆーいち , 2009/01/17

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