今より前へ。此処より遥か先へ。歩みは止めず、前進し続ける。高みを目指す。そうやって自分は強くなるのだ。
独立交易都市に、軍国からの使者が訪れた。迫るヴァルバニル復活のときに備え、ルークと軍国お抱えの聖剣師との間での技術交換の申し出だった。誰もが断るかと思えたその申し出を、ルークは受け、セシリーやアリア、リサと共に軍国へと向かう。何かに追われるかのような焦燥を抱くルーク。そしてそんな彼らと因縁深い帝国と群集列国は、大陸全土を揺るがすような動きを見せ始めていて……。
[tegaki]今回も熱い!![/tegaki]
巻が進むにつれて面白さも天井知らずのこのシリーズ。毎回楽しみですよ。
今回はついにルークが覚悟完了。これまでセシリーを中心に、彼女の成長を描いてきた物語ですが、ここにきてルーク自身の決定的な決意をもって、ふたりの物語へと移行していきそうです。もちろん、彼らのパートナーである、リサやアリアにも、それぞれの物語が深みを増してきて、どんどん魅力的になっていきますね。
魔剣を使う代償として、その身を苛まれ続けるルーク。刀鍛冶としての致命傷である、視力の喪失を遠くない未来に迎えることが確定的になり、ヴァルバニルを討つための聖剣を打つ刀鍛冶としての使命を全うするために、彼らしくない行動すら厭わずに他者に協力を乞う姿は、これまでの彼とは決定的に違った様子ですね。そして、そんな決意を抱かせるセシリーの信頼、パートナーとして共に在ることを改めて確信しあうリサとの絆の深さが心に迫ります。ああ、くそ、むやみやたらに熱い台詞が多くて燃える燃える。
一方のセシリーも、毎度毎度打ちのめされる展開ですが、それでも全てを守りたいという愚直なまでの自らの信念を違えることなく、ただただ「強くなりたい」と願う姿がどこまでも真っ直ぐに映ります。今回も、自分の強さに自信を持てそうと思った矢先の敗北、けれど、そこで蹲ったままではないのが、また、これまでの彼女と違うことを思わせます。戦士としての強さだけでなく、彼女の芯の部分が、打たれるたびに強くなっている、そう思わせる流れですね。
そして、今回のエピソードで明確に敵対関係となった帝国の、シーグフリードの秘密は、これからの展開に大きな影響を与えてきそう。彼が大陸の全てを憎むという、その理由は、彼が持つ名に由来するのはほぼ確定。セシリーの持つキャンベルという家の名との対立もありそうだし、底知れぬ彼の憎悪と狂気の矛先に立つルークやセシリーが、どう戦っていくのやら。
ああ、それにしても、終盤のルークとセシリーの共闘は良かった。これまでは肝心なところでルークに守られていたセシリーでしたが、彼女もようやくルークと並び戦うことができるようになった、そんな喜びを感じます。そして、戦友としてだけでなく、大切な存在としてお互いを意識し合うふたりの姿が微笑ましくて。帰路、ふたりの交わしたたわいない、それでもこれまでは片意地張って話すことなどできなかったような男女の会話とか、不器用ながらも着実に深まっていくふたりの想いが感じられましたね。
アニメ化も決まり絶好調。正直、アニメの方は期待しすぎるとアレですが、こちらの方は全く不安なし。激しく続きが楽しみなシリーズですね。
hReview by ゆーいち , 2009/01/31
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