ウィザーズ・ブレイン〈7〉天の回廊〈中〉

ウィザーズ・ブレイン〈7〉天の回廊〈中〉

stars けっこう大事なことだと思うんだけど……。だから……魔法士って人間だと思う? それとも、人間じゃない?

大気制御衛星へと空間転送された、錬・フィア・サクラ・イル・ディーは、そこで魔法士誕生の秘密へと肉薄する。一方、地上に残されたファンメイ・エド・セラは、地下施設を守る老人たちに捕らえられてしまう。魔法士を憎む彼らに、ファンメイたちの言葉は届かず、そして、その地下施設はロンドン・シンガポールの両シティの侵攻を受けようとしていた。老人たちに施設防衛を依頼された祐一たちに、シンガポール軍内で交渉に当たっていた賢人会議参謀の真昼が授けた策とは……?

[tegaki]アリスかわいいよアリス![/tegaki]

ついに語られ始めた、魔法士誕生秘話。名前ばかりが先行し、ミステリアスな存在に思えた彼女・アリスが実は……なキャラだったという。くそう、かわいいじゃねーか。水着だしな!

上巻と違って派手なドンパチは控えめながら、各陣営が動き始める中巻。遥か上空へ転移させられた錬たち帰還の要となる地下施設は、魔法士を憎む老人たちの手にあり、そしてそこが彼らの生命線であるがゆえに協力を得ることが困難。しかし、そこにはシティ軍が人質となってしまったファンメイたち奪還のために戦力を送り込んできて。

独立で行動するヘイズや、施設防衛を依頼されている祐一らは、その両陣営とは距離を置いて行動しつつも、またしても真昼の策に乗せられたのか新勢力を名乗るまでに至ってしまって。けれど、この勢力は、賢人会議とはまた違った思想で動けそうなメンバーなだけに、その場限りのブラフに留まらず、それこそ錬たちも巻き込んで、シティ・賢人会議に次ぐ第3勢力になってくれると面白いんですが。

それは、錬がサクラやイルに問いかけた、魔法士は人間か否か? という問いに対する回答の一つであるとも思えます。魔法士を使い捨てるシティ側、魔法士が幸せを掴めるなら人間がどうなろうと知ったことがないというサクラ、そのどちらにも明確な立場を取ることができない錬、迷い続けた彼の中にも、漠然としてではありますが何らかの答えが生まれつつあるのかもしれませんね。

逆に、老人たちに捕らわれ、心を抉られたセラは、なんだか心の安定を失いそうな雰囲気じゃないですか。まさかのヤンデレフラグとは思いませんが、彼女にとっては家族以外の他者は切り捨てるもやむなし的な気持ちや態度が見え隠れして、下巻の展開に少しばかりの不安が……。

そして、ファンメイはまたしてもひどいことに。毎度毎度、彼女はひどい目に遭って可哀想に過ぎるのですが、そんな位置づけなのですか? ともあれ、彼女こそ幸せになってほしいと願わずにはいられないのですよ。

hReview by ゆーいち , 2009/02/07

ウィザーズ・ブレイン〈7〉天の回廊〈中〉

ウィザーズ・ブレイン〈7〉天の回廊〈中〉 (電撃文庫)
三枝 零一
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