あの時。最初に出合った時に、出来るだけのことはするって約束したし。ここまで来たのに、最後の最後でエニルから嘘つき呼ばわりされたくない。最後まで付き合うよ。
騎士の試験を受けるために立ち寄ったとある街で、ラドウィンは貴族の少女・エニルと出会った。しかし彼女の姿はラドウィンにしか見えず、エニルは自分が何者なのかも分からないと言う。人間に見えた彼女は、実は精霊であるらしい。そして、宿り主を持たないエニルは、このままでは消えてしまうという。そんな彼女を救うために、ラドウィンは連れのセネマとエニルと共に、旅に出ることを決意する。
お話の流れが、古き良き RPG のお使い的なものを感じました。とある街で不思議な少女・エニルと出会い、ラドウィンは彼女に振り回されつつも、彼女の身に訪れる運命を覆すために冒険に出る。でも、ラドウィンはエニルに引っ張れる感じで旅をしてるんで、どうにも主体性がないように思えたんですよね。
主人公である彼が、魔法ではなく剣の道を選び直した理由が、過去に彼の師となった魔法使いとの別れであるというのは語られてるんですが、理由付けとして弱いのかなあ。魔法と剣の両方をかじったという、ある意味中途半端な実力しかないラドウィンが、それでも冒険の最後で勝利の鍵を握っていたのは、主人公らしいのではありますが。
しかし、なんだよなんだよう。こんな冒険をするなら、最後は結ばれ完、じゃないのかよう。せっかく1冊通して、エニルとの縁を深めていったかと思うのに、妙に半端な終わり方になってしまったのが残念。それに、ラドウィンと共に旅を延々と続けてきたセネマの正体が以下略だったのとか、以降の展開に影響与えてない微妙な設定もあったりして、頁数の割に語り尽くされてないのかなと思いました。
hReview by ゆーいち , 2009/03/01
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