アカイロ/ロマンス〈3〉薄闇さやかに、箱庭の

stars あなたはなにも知らない。鈴鹿のことを。一族に潜む闇を。そして、あの夜のことさえも。

学校帰りの夕方、景介はひとりの少女と出会う。景介のよく知る詩を口ずさむ見知らぬ少女。姉・雅が昔よく諳んじていたその詩を知る少女・檻江は、繁栄派に属していながらも枯葉の夫候補である景介に対して何の感情も抱いていないようだった。姉の手がかりを掴むため、檻江の後を追う景介。そして、辿り着いた病院で景介は鈴鹿という一族が抱える新たな秘密を知ることとなる。

[tegaki]つうれん大爆発![/tegaki]

枯葉のフリーダムな発想に、前回に引き続き度肝を抜かれる今巻。というか、つうれんが不憫で不憫で仕方がないような……。擬人化されたとしたら薄幸の少女間違いなし?

まぁ、そんなシリアスなバトルシーンにひとときの笑いを提供してくれつつも、物語はどんどんと深く深く暗い場所へと落ちて行っているような感じ。

景介の立ち位置は、彼が意識的に鈴鹿の側へと移して行っているようですが、それでもまだ、人間である景介と人ならざる鈴鹿の一族である、枯葉や棗たちとの間には自覚的な距離が空いているように思いますね。まぁ、そこは、決して超えることのできない断絶であり、景介がこれからどのように枯葉との関係を築いていくかどうかという点においては、今回登場した夭と、彼女の夫である篠田医師との人間同士ではなしえないような信頼の形が示されたことで、また新たな選択肢が生まれたように思います。

一方の枯葉は、一族の頭主として祭り上げられながらも、今回の供子や双子によって明かされた、鈴鹿という一族そのものに蔓延する悪しき慣習と、これからは対峙せざるを得ないような雰囲気ですね。繁栄派との抗争もそうだけれど、彼女が立ち向かうべきが、衰退の危機に瀕している身内であるというのは皮肉なもので。清廉で高潔な彼女の心が、そういった闇と向かい合ったときに、彼女がどうなるか、そしてそんな彼女を景介が支えることができるのかというところが気になりますね。

景介の姉についても足跡の一端は掴めつつも、いまだ所在と生死は杳として知れず、けれど彼が枯葉たちとの関わりを続けていく限り、事実と真相は遠くないうちに明かされそうな予感がしますね。

人間社会でも同様ですが、個々人の不幸以上に鈴鹿という閉鎖された社会の闇の深さに恐れを覚える、そんな展開が今後も待っていそうですね。

hReview by ゆーいち , 2009/03/21

アカイロ/ロマンス〈3〉薄闇さやかに、箱庭の

アカイロ/ロマンス〈3〉薄闇さやかに、箱庭の (電撃文庫)
藤原 祐
アスキーメディアワークス 2009-03-10
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