迷い猫オーバーラン!〈3〉…拾う?

2013年4月18日

stars わたしの家族は、わたしが決める。生まれたときから一緒にいた家族はいないけれど、今から一緒にいる家族は、決められるから。

夏祭りの宣伝の効果あってか、経営が立ち直りつつある『ストレイキャッツ』。新たにバイトを始めた千世も初めての仕事に少しずつ慣れつつあった。そんな中、間近に迫る梅ノ森学園の体育祭。学園の頂点に君臨する千世は、またしてもわがままを言い出し、学園の女子の体操服をブルマにすると言い出す。それに反発する文乃はスパッツ派を立ち上げ、体育祭開催前に学園を二分する対立が生まれてしまう。そして、迷い猫同好会が動画投稿サイトに上げた宣伝が原因で、希の元いた施設に、彼女の所在がばれてしまい……。

[tegaki]もっかい希のターン![/tegaki]

第1巻で乙女さんに拾われ、この物語の発端となった希のお話はこれからだ! うやむやにされていた、彼女の出自や、彼女が暮らしてきていた場所、本当の保護者などなどが明らかにされ、希に選択を迫るお話。

前巻で無事に発足した迷い猫同好会の活動も順調、みんなの「家」であるストレイキャッツも持ち直し、と良いこと尽くめな日常はそんなに長くは続かない。

少しずつ良い方向に変わって行きかけてる千世も、生来のわがままはそんな簡単には治らない。そして、筋金入りの意地っ張りで狼少女の文乃は、巧を独り占めしようとする千世とは根本的にそりが合わない。そんなふたりの対立がまた生まれ、選択を迫られ、けれどもどちらにも付けないままの希はどうするのか? 希が出した答えは奇抜だけれど、彼女なりの正直な答えでしたね。何よりも「家族」というものにどうしようもなくあこがれていた希の心が、だんだんと明かされていく途中での行動でしたし。

これまで、余り自分の気持ちを他者に伝えるようなことをしなかった希。巧を巡る恋の駆け引きにも一歩引いた状態で、自分から積極的に踏み込んでこなかったのは、彼女が十分以上に賢かったことと、かつて過ごした施設での出来事が原因で。けれど、法律で縛られる親族ではなく、家族というものは自分で見つけ自分で決めることができるのだと、そう思うに至った希が状況に流されることなく、自分の意志をはっきりと口にする、そのことをもって、ようやく彼女も本当の意味でストレイキャッツの家族になれたんじゃないでしょうか。

希の本来の保護者も自分の利益のためだけに動くような人間でなく、なんだかこの作品も本当の意味での悪人がいない心地好い世界が広がってるような感じですね。自分達で集まり、自分達で生活を作って、良いも悪いも全部を全部受け入れて家族という絆を育んでいこうという、暖かな空間がとても好きです。

さて、次巻からいよいよ巧争奪戦が本格的に始動? 気持ちを伝えたままで答えを求めない文乃、そんな状態だと誰かに取られちゃうかもしれませんね、どうする?

hReview by ゆーいち , 2009/03/22