あたしに、何ができるかはわからない。だけど、あたしは何かをしてくるよ。ちょっとでも、助けたいんだ。ひとりでも、守りたいから。死ににいくわけでも殺しにいくわけでもない。だけど本気じゃないわけじゃない。
魔王の軍勢と人類の戦いもついに最終局面・決戦の時が訪れる。人類側の最終兵器となり魔王の城へ突入した伊依は、彼女自身の信念に従い、全ての元凶である魔王さえ救おうという決意を秘めていた。泣いても笑ってもこれが最後の戦い。様々な秘密が明かされる中、伊依は自分の夢を実現させることができるのか?
[tegaki]大・団・円!![/tegaki]
いやぁ、やっぱりこういう展開でこういうエピローグが描かれるとたまりませんね。
人類と怪造生物の存亡をかけた戦い。戦力において劣勢となる人類側は、最終兵器となった伊依と、虚界そのものである魔王とを直接対決させることで、この戦局を覆そうとするけれど、伊依の芯の部分はどこまでもぶれていなくて、彼女が魔王と対峙したときに求めたことは、やっぱりどうしようもなく伊依らしいことで。
ここに来てようやく明かされる虚界誕生の秘密、そして魔王と怪造学会総長との関係、最終兵器の片羽たる魔姫と魔王の間に横たわる溝、と物語の根幹部分の設定がこれでもかと語られます。そのワリに説明臭くないのは、やっぱりこの最終決戦の雰囲気、あらゆる場所で人類側として戦う、かつては敵だった今は仲間であるひとたちの姿、伊依を信じ、彼女の夢に自らの夢を託すかのように彼女の背中を押してくれたひとたちの姿、そんなのが熱く熱く描かれているからですかね?
この作品は日日日の作品の中でも非常にまっすぐな物語な印象をずっと抱いていました。裏切られても打ちのめされても、ひとたび折れようとも、最後の最後まで自分の夢を信じ貫き通す伊依の姿を描き通して見せたからこそ、エピローグで描かれた「その後」の世界がどうしようもなく眩しく映るんですね。
ひよっこで甘ちゃんだったかつての伊依の姿があったからこそ、皆の視線を一身に集め、それでも笑って自分の夢と信念をはっきりと言葉にできる未来の伊依がいる。大人たちが築き上げてきた怪造学というものを、バトンタッチされた伊依たちが、さらに次の世代へとその想いを伝えていく、そんな明るい未来を十分以上に予感させてくれる素敵なエンディングでした。
hReview by ゆーいち , 2009/03/29
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