わたし、音羽姉ぇと一緒ならどこまででも、いいから……。一緒に行くから!
生き別れの双子である堂坂音羽と春日井小夜歌は奇跡的な再会を果たし、同じ学舎で共に時間を過ごすようになる。しかし、小夜歌は継母の虐待を受け続け、それを助けたいと音羽が手を尽くしても、事態は一向に快方に向かうことはなかった。どうしようもない状況はいつしか殺意に変わり、音羽は小夜歌との自由を手に入れるため、完全犯罪の計画と実行を決意する。
今回も意欲的かつ刺激的な表紙ですなあ。血みどろて。
そして、またしても前後編。今回が出題編だとしたら、次回が解決編になるという構成でしょうか。
これまでの主人公である京也の姿がどこにも見えず、ただ事件を引き起こすことになる堂坂音羽と春日井小夜歌のふたりが、たったひとりの脅威に追い詰められていき進退窮まる様をこれでもかと描いていきます。現代を舞台にしていて、さらにはこのご時世を反映したような設定で話が進むものだから、どうにも生々しくて心が痛いです。そして、たったひとつの事態打開のための策により、活路を見出したかと思ったら、彼女たちの前には断罪者となりそうな人物が現れて……。
そういう意味では、こちらとあちらを踏み越えた存在となってしまった音羽と小夜歌の前に、彼が姿を見せたのも当然の成り行きなのかもしれません。それがいかなる理由かは関係なく、ただ踏破してしまった彼女たちは、逃げ込み、反撃し、勝ち取ったはずの平穏な世界を、またしても望まない形で破壊されてしまうのでしょうか?
容赦ないラストで片を付けてきた作品だけに、楽観も安心もできない引きですよね。
hReview by ゆーいち , 2009/04/04
- マージナル 5 (ガガガ文庫)
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