生まれてきてよかったわ。この世界にね。毎日が楽しかったわ。この学園でね。すべては陰謀だったけど、ありがとう、お母さん――あなたの娘は、幸せだったわ。
魔法の解けたシロオは、再会を果たしたミミクロと共に自分達に向けられた悪意の正体を知るために学園を出て旅をしていた。子ども時代を過ごしたかつての我が家を訪れたシロオは、しかし、そこで連続通り魔事件の犯人として捕らえられてしまい……。
俺たちの戦いはこれからだっ!
ってな調子で大団円にまで一気に持っていったなあ。力業だとか、最後の最後でさらに風呂敷広げて見せたとか、別に前巻で完結していても良かったんじゃねとか思いつつの『魔女の生徒会長』完結編!
晴れて再会を果たしたミミクロとシロオ。魔女の生徒会長という役柄から解放され、世間の仲むつまじい男女のように甘甘な関係を楽しむ暇もあらばこそ、不穏な動きを見せていたシロオの妹とママが、ついにその目的を明らかにしてきて……。
って流れは日日日作品には良くあること。そういえばアンダカもそんなノリで見事な大団円に持っていったような気も。さすがにボリュームの面からするとやや食い足りない感じがして、特に後半の最終決戦などは前巻の総力戦のイメージが鮮烈だったせいか、ラストバトルにしては燃え成分がもうちょっとほしかったなあと思いつつも、シロオのみんなを思う言葉と、彼女の背を押すみんなの言葉の描かれには、少年漫画らしいノリが存分に感じられたりしましたね。
徹底して大人というものの存在を設定の影の部分として、子どもたちが自分たちの世界を築き、守り、成長していく過程を描いてきたストーリーの最後に登場した唯一にしてすべての元凶である大人。そんなたったひとりの大人も、その背後にある大国の傀儡にすぎず、今後子どもたちはさらなる過酷な状況にさらされハッピーエンドはまだ遠そう。
けれど、シロオが幼い頃思い描いた世界は少しずつ近づいてきているし、周囲の大人がどう言おうとも、彼女の友人や大切な人たちが、シロオがなりたかった存在にすでになっていることを全肯定してくれるという、小さな世界にあふれる幸せ。
まだまだ戦いは終わらない。始まったばかりの、子どもたちが新しい世界を作るための大人たちとの戦いの果てにあるものが、これまで流した血と涙で染まらない輝かしい未来であることが感じられる終わり方でしたね。
なんだかんだで気持ちの良い終わり方を用意してくれたなあ。良かった良かった。
hReview by ゆーいち , 2009/04/11
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