美しく正しい“痛み”は与え合いだわ。痛いから相手を傷つけて、相手に痛みを与えて、そして自分も傷つく、その絆を喜ばないと。そうやって全ては正しく燃え落ちてゆくのよ。命も、物も、心も、自然も、世界も。全ては痛みの絆の中で。
夏休み、雪乃とできるだけ長く一緒にいようと蒼衣は思っていた。だが、泡禍解決の応援の要請で現地へ赴いた雪乃と颯姫は、事件の舞台となった家に閉じ込められ外界と隔離されてしまう。殺せない、死なない〈異端〉を相手に、消耗していく雪乃。彼女たちの救出のため、蒼衣は単身閉ざされた異界へと踏み込んでいく。
[tegaki]芽がっ! 芽がああああぁぁ!?[/tegaki]
うええぇぇ。今回はキモ過ぎます。かつて猛威を振るった蓮コラを彷彿とさせるような生理的嫌悪をこれでもかと喚起するような異常と恐怖の描写に後頭部がむずむずしてたまりません。苦手な人は、植物とか見たくなくなるんじゃあ……。そんな我が家の食卓には山菜が並びまくりました。美味しくいただきました。
今回のモチーフは「いばら姫」。死と復活をモチーフに、殺せない異端というなんとも厄介な目に見える敵と、次第に世界を浸食しつつある植物という原因不明の現象というふたつに晒され、力の通用しない敵を相手に雪乃は自身の存在価値を揺さぶられている感じ。じり貧の消耗戦で、冷静な判断力さえも失われてしまったらアウト、蒼衣への対抗意識だとかそんなので我を貫く段階は過ぎ去ってしまってるよなあ。
逆にこういうときこその切り札となる蒼衣も泡禍の理解というハードルのクリアのためにはまだまだ時間がかかりそう。そもそも泡禍の発生元となる保持者もまだ特定できてないし、モチーフとの対応も曖昧なまま。絶体絶命の状況下で次巻に続きましたが、どうなることやら。
そして、安全圏へ逃がされたかと思いきや颯姫の前にも謎の人物が……って多分これまでに登場した人物な気がしますが、誰だっけ?
hReview by ゆーいち , 2009/04/19
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