原点回帰ウォーカーズ〈2〉

stars そうよ。現実は常に小説の中より厳しいのよ。だからアタシは戦っていかないといけない。この世に息をしている舞台バカはいないのだ。アタシはこのどこにもやれない想いを墓までかかえて生きていかなければならないのだ。

表題的には1巻できれいにまとまっているので、タイトルとしての意味はほとんどないような気がしますが、続いてしまいましたな第2巻。短編集ですが、どれもこれもが良い感じにラブラブしていてにやにやが止まりません!!

天ノ下芝蘭よ、愛を描け。

収録の4つのエピソードの中で一番好きなお話。

三奇人のひとり天ノ下芝蘭に対して申し込まれる十哲入れ替え戦。対戦相手の策により敗北必至な状況で、くすぶり続け、不完全燃焼の固まりのようだった彼女が、失われていた情熱を取り戻していくお話。

まぁ、そんな対戦云々はともかく、変人奇人の集まりたる十哲内の三強・三奇人の面々の信頼関係やら微妙な気持ちのやりとりやらに悶える悶える。何このツンなお嬢さんっ。

恋に恋するお話を描いて見せたかと思ったら自分の気持ちを作品に投影していた芝蘭さん。作中の小説もステキだわ、その後のエピローグはもっとステキだわ。照れ隠しに蛇足と断じる彼女の不器用さがまた可愛くてたいへんですね。でも待て、ソレの中のひとは小学生の女の子なんだぞ、と。

……それはともかく天ノ下芝蘭著「にいがた!」はどこで読めますか?

渡会竜太朗は呪い殺す。

神をも召喚する男として名を馳せた渡会竜太朗と、彼を十哲の座から引きずり下ろした魔道サイエンティスト・物理火燐の因縁の対決再び!

何でもありな作品であることを象徴するかのようなトンデモなお話。誇張も何もなく神を召喚する人間と、そのシステムを科学的に解明してしまう科学者。逆恨みなのか男の子の意地なのか、火燐に呪いを掛けようとする竜太朗の空回り感あふれるコミカルな部分と、そんな彼に対して、一縷の望みを掛けていた火燐の、お互いの心が通じ合うまでの不器用で遠回りな恋バナでしたね。らう゛~!

久我原いすみはしばかない。

足利アキラの災難、その一。

『当局』最強戦力の久我原いすみにまつわるお話。

対人誘導活発化細菌という自分に対して周囲の愛想が良くなるという菌を浴びてしまったアキラを守るため、いすみが立つ! ……ホントか?

二言目には「しばく」と言うような全知全暴の二つ名を持ついすみさんの八面六臂の大活躍。でも、彼女がアキラを守るのは、菌によってアキラに好意を持たされたわけではなく、実は……、という。うああ、こりゃまた難儀な想いの一方通行。報われないような背景がほのめかされましたが、でも、こういう後輩思いな先輩ゴコロというのもステキな物なのですよー。

足利アキラは嫉妬する。

お前ら、とっとと付き合っちゃえよ、もどかしいなぁ、もうっ!

というか、前巻であんた等、自分たちの気持ちを確認しあったんじゃないのかい、なアキラが章夫に嫉妬の炎メラメラなお話。てか、もう、オトメゴコロ全開で局長に嫉妬するアキラがまた可愛い。

だがしかし、水着満載なサービスシーンのはずなのに、イラストがカラー口絵1枚しかないのはどういうことだああああ。

ともあれ、章夫への気持ちを隠すことなく、自覚的に彼と付き合っていこうと決めたアキラに幸あれ! 肝心の章夫はそんな気持ちもつゆ知らず、けれど自分の中のルールに従ってアキラを最優先で大切にしていこうってのが、アレですが、このふたりはこんな関係でずっと行くのがらしいのかもしれません。

hReview by ゆーいち , 2009/05/31

原点回帰ウォーカーズ〈2〉

原点回帰ウォーカーズ〈2〉 (MF文庫J)
森田 季節
メディアファクトリー 2009-05
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