見せてあげる。そして思い知りなさい。あんたの救ってきた人間の醜さってやつを。
[tegaki]これにてひとまずの完結![/tegaki]
第1巻の救いのない物語を連作した形式からずいぶんと雰囲気変わって、最後は長編で落ち着きましたね。この辺の作風の変化を無理矢理に納得するとなると、九の人間に対する距離感の縮まり ((や、もともと救いがたい人間をずっと見てきてるわけだから、むしろ九のそれでも人間を救いたいという想いに対する読者側の理解の深度が増していくにつれて、といった方が正しいのかも?))と、ささやかな希望の現れなのかなあとか。
まぁ、一二三の登場の時点で、九との対立構造が生まれてしまい、物語としてはふたりの対決と決着を持って完結するというのは正しいと思いますが、初期の割とダークな展開に惹かれる部分があっただけに、今回のデス・ゲームな展開は逆にありきたりに感じてしまったかなあ。別作品だけれど土橋作品とかはそっち方面を突き詰めていったりしてるわけで、そういう点では既視感がありました。
むしろ、極限状態に置かれ互いに不信を募らせ会う人間たちの様子を見ながらも、淡々と、本音を見せずに目的達成のためにゲームに挑む九と、囚われながらも彼女を助けようと四苦八苦する一やあまりあといった、悪魔サイドの描かれ方に注目すべきでしょうか。相変わらず雑学をとめどなく垂れ流しつつ機転を利かす一や沸々と怒りをため込むあまりあの対照的な様子と、九を救おうとする共通した想いとか。
そして、決して相容れない思想を持つ九と一二三の決着は冷徹で、冒頭でふたりが契約した通り、敗者は問答無用で地獄行きなわけですが。けれど、そんな状況にあってさえらしさを失わない一二三はさすがというか。ライバルキャラとしては、これまではいまいち印象に残らないような微妙な嫌がらせをしてきた彼女ですが、こんな最後を見ると考えを改めたくなりましたね。
エピローグでは相変わらずな掛け合いで締めてくれましたが、欲を言えばこういった九と一のやりとりを本巻中でもっと見せてほしかったかな。
hReview by ゆーいち , 2009/07/05
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