紫色のクオリア

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stars だからあたしは、否定しない。だからあたしは、受け入れる。決して彼女の紫の目を、否定はしない。

自分以外の人間がロボットに見えるという少女・毬井ゆかり。そんなゆかりを親友に持つ波濤学は、普通とは少し違う彼女の周囲で起こり始める奇妙な出来事に巻き込まれていく。世間を騒がす連続殺人犯、そしてやって来る天才的な転校生。日常とはかけ離れた存在が、まっすぐに目指すのは、毬井ゆかりだった。

いやぁ、評判通りに面白いお話でしたね。割と既視感を覚える設定だったりするのは過去にプレーしたなにがしかのゲームのイメージがオーバーラップしているのかも?

3つの短編で構成される作品。それぞれに趣きが異なる雰囲気で、『毬井についてのエトセトラ』では、世界が違って見える毬井ゆかりという少女と、彼女の一番近くにいたガクちゃんことマナブの日常と、事件の始まりを。『1/1,000,000,000のキス』では、そんな日常、あるいは学園異能とも呼び変えても良いような枠に留まっていた物語が、その枠を大きく飛び越えて宇宙の彼方まですっ飛んでみたり。そして、最後の『If』ではこれでもかという大団円を描いてみせたりと、この構成もさることながら、壮大な設定と理論に裏付けされない人間の機微によって流転した長大な時間を見事に収束させる、うえお久光の手腕に圧倒されますね。

とにもかくにも読み始めたら一気。全ての生物がロボットに見えるというゆかりが見ている世界と、マナブが見ている世界が根本から異なっているという事実が明らかにされる『毬井についてのエトセトラ』の終盤のホラーじみた展開から、一気に SF テイスト満載な物語へと跳躍するという、その発想自体が斜め上ですね。とある事件を、そこで生まれる悲しみを、喪失を避けるため、ただその一念で果てしない旅を行うことを決めたマナブの変質具合と、その終わりの見えなかった旅路の執着地点で得られた何でもない答え。当たり前に思えるその答えに辿り着くために、遠大な旅を続けたマナブの、自らを例えたのが「フェルマーの原理」というのが何とも皮肉な感じがしますが、だからこそ、まっすぐに進んだマナブが辿り着いた場所にいたゆかりこそが、ずっと探し求め続けていた彼女の姿だったのかなあと。

ゆかりが手にしたロボットに与えるキス。それがマナブの姿に形を与え、想いに意味を与え、そしてゆかりからの精一杯の答え。遠回りに遠回りを重ね、無限に連なる失敗を重ね、その先にあった答えは、どこにでもありそうで、だからこそ尊い、ふたりの間だけに生まれる絆。ガチな SF だけれど、その果てに生まれた優しげな物語らしい結末にこそ、心安まる暖かさを覚える、そんなお話でした。

hReview by ゆーいち , 2009/08/09

紫色のクオリア

紫色のクオリア (電撃文庫)
うえお 久光
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