ウェスタディアの双星〈5〉乙女の猛攻に名軍師苦戦するの章

stars だから決めたんだ。もう二度と同じことを繰り返さないために、僕がきみをしっかり見ていようって。

隣国・シャムラバードで発生したクーデター。ウェスタディアに亡命を求めるシャーラ公女を助けたアルファーニは、なぜか彼女に懐かれてしまう。アルをダーリンと呼び、人目はばからず彼にまとわりつくシャーラ。それが面白くないローゼは、アルとの関係もぎくしゃくしてしまい……。

ラブコメ比重が増しつつある第5巻。そして双星ってタイトルに付いてるのに、バドエルさんがどんどん空気になっていくのを誰か止められないのかー!?

戦場ではまさに獅子奮迅・一騎当千の名将なれど、日常シーンでは良いところないですね、バドエルさん。浮いた話も出てこないし。

ともあれ、ウェスタディアを取り巻く状況は刻一刻と雲行き怪しくなってくる模様。大国・ロアキアの実権を野心に燃えるオリアスが握ったことで、戦火は一気に緩衝地帯の各国を巻き込んで広がりそう。

今回のシャムラバードのクーデター騒ぎも利用して、もう一方の大国・ルフェールもこの機を逃さず裏で動き始めてるし。

小国で、不安定なウェスタディア。まだまだ為政者としては未熟な女王と、それを支えるチェザーリたちの理想を実現するために越えなければいけない高い壁が、いよいよ目の前に迫ってくるのでしょうかね。

一方のアルの方は、ローゼとの関係が一歩前進? これまでイケイケで迫られてきた彼女の前に突如現れた恋敵との鞘当てで、劣勢に立たされ肝心の戦いの場でもらしくない失敗。それでも、彼女と、彼女とともに少なくない時間を過ごしてきたアルの間にある何かが、少しずつ形を持ち始めてきたことを感じさせる戦い。アル自身の戦略とか、バドエルの戦術とか、それだけでは打開できない状況になったときのもう一つの切り札足り得る繋がりが、生まれつつあるのでしょうか。

大きく動き始めそうな国家間の緊張が、物語の規模にしてはあまり語られてないので、そろそろスケールの大きな展開に期待したくなりますね。様々な危機的状況をくぐり抜けてきた双星のふたりも、大国の大軍相手には苦戦必死、政治面でのチェザーリたちの見せ場が、またやって来たりするのかな。

hReview by ゆーいち , 2009/08/11