正直、最初はどうしてこうも何もかもうまくいかないんだろうと苛立っていた。けど、人が集まって真剣なやりとりをすれば、いろいろあるのは当然なんだと私は思うようになった。なあなあでやり過ごしてどうにかなるほど、三校合併は甘くないんだと。私はすごく苦しいよ、向坂。いつも苦しい。でも、それは産みの苦しみだと信じている。
陽菜への告白で見事玉砕してしまった恵。しかし、憂鬱な二学期の始まりは、暫定生徒会にさらなる過酷な試練を告げることとなる。突然1ヶ月前倒しになった文化祭の日程。残り少ない時間の中、生徒会はもちろん、生徒たちも大混乱。ただでさえ、生徒会内部の人間関係はぎくしゃくしているというのに……。けれど、恵と陽菜の間がぎこちないのは分かるけど、陽菜と鳥越のやりとりがぎくしゃくしているのはどうして?
[tegaki]ここに来て急展開!?[/tegaki]
や、まぁ、恵の玉砕から一体どんな風にお話が進むかと思っていたら、恵にとっては傷口に塩を塗り込むような展開で見てられません。収まるところに収まった人間関係とはいえ、これまで陽菜のために頑張ってきた彼の想いは報われるどころか、良い踏み台として使われてしまったような感じで切ないですね。彼女の鳥越への恋ごころは、決して消えることのない、恵の入り込む余地もないくらいに、想像できないくらいの長い長い時間を積み重ねてきた結果ゆえのものだったわけで、だからこそ、彼女と彼が紆余曲折を経て新しい関係に辿り着くのも必然、とはいえ、それをまざまざと見せられてしまった恵の心は再起不能なんじゃないかなあ……。
こんがらがりまくっている恋の糸はようやく解ける気配を見せ始めましたが、肝心の暫定生徒会の行く末はまだまだ不透明かなあ。今回の文化祭開催にまつわる騒動も三校合併が生んだ歪みのひとつ。その先には体育祭も控えているだろうし、それぞれの学校を率いてきた生徒会が苦心の末にひとつにまとまりつつある中、次々に訪れる難題は、彼らを試しているかのよう。ひとの目には見えない黒プニによって、騒動の根は深くなり、けれどそれを解決する度にみんなの結びつきは強くなり、良い方向へ向かっているように思うけれど、結局答えがどうなるのかは見えていませんね。
けれど、自他共に認める凡人であるはずの恵が、超高校生級な他の二校の生徒会長である鳥越や葛城さんをはじめ、生徒たちから徐々に認められつつある様子を見ると、最終的に誰が生徒会長になるのかは見えてくるのかな。飛び抜けた才や財はないけれど、恵の行ってきた仕事は、これから行っていく仕事は、きっとみんなの共感へと繋がっていくんでしょうね。水穂さまの手伝いをいやいやながらしつつも、その目的達成のための努力を厭わない彼だからこそ、みんなの信頼を勝ち得ることができているのでしょう。
だというのに、今回のお話の最後の最後で大きな失敗をしてしまう恵。その結果の葛城さんの想いの行方も気になりますが、だからといって恵がそう簡単に自身の失恋を乗り越えられるとも思えません。彼自身の恋はどうなってしまうのか? これまで一顧だにされなかった恵自身を見てくれるひとは現れるのか? その答えがきっと最終巻で出されるんだと期待して良いんですよね良いんですよね?
hReview by ゆーいち , 2009/09/12
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