灼眼のシャナ〈19〉

2009年11月19日

stars 私は貴方とは異なる、二人で生きる道として、これを選んだ。だから、実現を目指す。最強の自在法を、誰もがするように、二人で通い合わせる日のために。

灼眼のシャナ19(書影大)

『大命』を目指す“蛇”坂井悠二を追い、『詣道』に突入したシャナ。先代『炎髪灼眼』に優るとも劣らない力を覚醒させた彼女は、カムシン、ヴィルヘルミナ、レベッカら強大なフレイムヘイズと共に、決戦に備え突き進む。―そこに突如、茜色の炎が立ちはだかった。それは、最強の“殺し屋”サブラクによる開戦の烽火。一方、ゾフィー率いる兵団の活躍により、『星黎殿』はついに陥落寸前にまで達していた。その異常事態に自軍の危機を察した“仮装舞踏会”総司令官デカラビアは、意外な方策を採り…。フレイムヘイズと“徒”の一大決戦、その決着の行方は……。

[tegaki font="mincho.ttf" color="white" strokesize1="6″ strokecolor1="Crimson" strokesize2="4″ strokecolor2="LightCoral"]この愛こそが最強のちから[/tegaki]

拡大し熾烈さを増すフレイムヘイズと“徒”の互いの存亡と悲願をかけた大決戦。

敵となった悠二の手に落ちたシャナも待望の復活を果たし、いよいよ反撃ののろしを上げようとする第19巻。思えば遠くへ来たものです。

しかし、この大戦に突入してからというもの登場人物が非常に多くて、さらには局面局面において活躍してくれるものだから、状況をつかむのが大変ですね。あちらではフレイムヘイズ勢が優勢に戦いを進めたかと思えば、こちらでは“仮装舞踏会”側が劣勢を跳ね返そうと気勢を上げる。地球上の至る所で激突を繰り返す両勢力の、名だたる戦士たちがそれぞれ見せ場を用意されているようで、めまぐるしく切り替わり同時進行する戦いの行方を把握するのが一苦労。登場人物一覧とかほしくなっちゃいますね。

刻一刻と変化する戦局の中で、しかし、すべての命運を分けるのはここではない別の場所を目指し、詣道を進む祭礼の蛇やそれを追うシャナたち。少数精鋭同士の追撃戦。再び立ちはだかるサブラクに相対するのはヴィルヘルミナやカムシン、そしてレベッカという最大級の戦力。この両勢力の対決もまた本巻の見せ場の一つでしょうね。3対1という数の不利を感じさせないサブラクの強さと、その強さに反したかのような彼が彼として戦う理由。ここでゲーム版のシナリオも絡めてくるあたりが、この作品の綿密に構築された世界観を伺わせますが、ゲーム未プレーだとサブラクの回想で登場してくるメアに対しての思い入れが大きくないのが残念なところでしょうか。冷徹なマシーンのような殺し屋としか思えなかった彼の中にあった記憶が思いのほか暖かなものだったことに驚かされたりもしましたが。

そして、まさにこの戦いの中心にあるであろうふたり。シャナと悠二。互いを想い合いながらも、敵対することを選択したふたり。シャナの吹っ切れた想いと覚悟、悠二と戦うことに戸惑い、迷い、覚悟を下せなかった彼女とは別人のような姿で悠二の前に立つ彼女。自分自身で悟り、得た、愛という最強の自在法を手に誰もが思いつかなかった答えを突きつける彼女は、確かにこの場において悠二をして圧倒せしめる高潔さを身にまとっていましたね。

しかし、ここでも無情に訪れるタイムリミット。フレイムヘイズたちの奮闘むなしく、ついに現世へと帰還を果たしてしまった創造神。これまで繰り広げてきた大戦さえも、これから起きるであろう戦いのほんの序章でしかなかったかのような展開。これから先はさらなる総力戦でさらに凄絶な流れになっていきそうですね。ようやく復活したマージョリーもこれからの戦いでは大きな戦力となるはず。彼女の豪快な戦いっぷりにも期待です。

響き渡る新たな戦いの号砲をただただ自然に受け止めるシャナ。迷いなく、自分の信じたもののためにまっすぐに悠二と相対するシャナは、未だ実現できない、自分の決めた答えを叶えるために、最後の戦いに赴こうとしているのでしょう。

hReview by ゆーいち , 2009/11/17

灼眼のシャナ〈19〉

灼眼のシャナ〈19〉 (電撃文庫)
高橋 弥七郎
アスキーメディアワークス 2009-09-10