――だが俺、遠山キンジは―― こいつのためなら、この身を危険に晒してやろうと思う。おそらく、世界中の男たち……世界中の、主人公たちと同じように――
東京武偵高校、そこは武力を行使する探偵――通称『武偵』を育成する特殊な学校。強襲科の超エリートでSランクの最強武偵・アリアのパートナーに選ばれてしまった(普段は)ただの一般人・遠山キンジの前に、犯罪組織『イ・ウー』のリーダーである『教授』がついに姿を現した。しかし、その人物はアリアにとって、かけがえのない大切な「あの人」で――。キンジに銃を向けるアリア、避けられない運命、二人の前に立ちはだかるのは全てを予知する力――『条里予知』。それはまだ始まりの終わり、舞い戻る日常、新たなる敵――。大スケールアクション&ラブコメディー第5弾。
[tegaki font=”mincho.ttf” size=”36″]物語は、ここから始まる![/tegaki]
ラスボスとして登場した気がする『イ・ウー』の『教授』こと、シャーロック・ホームズ。アリアの祖父にして最高の探偵である彼の、あまりの超絶っぷりはこれまでのインフレ度合いをさらにぶっちぎってしまった感が。これまでもたいがいそんな感じがしていたけれど、もはや人間同士の戦いじゃないですね。
次々に登場してくる偉人とその血に連なる者たち。その脅威が増すのに応じて、キンジの方もどんどんと新たな能力を開花させていく……って、奥の手のはずのヒステリアモードにさらに奥の手があるとか。それなんて無我。人外の領域に踏み込みつつも自分はそれでも超人の域にはたどり着けないって思ってるように感じますが、キンジ、あんたも十分超越者ですから。というか、強さのインフレに対応していくキンジの強さを描いておきながら、さらにその上を行く強敵が登場とか、この青天井な偉人の投入にお話はどこまで荒唐無稽に風呂敷を広げていくのか。もはや、そんじゃそこらのことじゃあ驚かないぞ、と。
キンジの尊敬する兄・金一=カナをもあっさり退け、別格の強さを見せつけたシャーロックも、自身が語るには、彼の登場さえも物語の序章の、その終わりに過ぎないとか。これからが本番とばかりに、ネタ晴らしタネ明かしをして、意外にあっさりと退場した感じがしますね。ラスボスの風格をたたえていながらも、この早すぎる退場。その言葉通り、通過点に過ぎないのだとしたら、彼が自分の意志と、『緋弾』と二つ名を、アリアに継がせ、そしてキンジとの関係を試すようなことをしたのも、すべてはこれからのほんとうの物語のためということですか。
第一部のラストというにふさわしいような脱出劇。お互い、もはや別ちがたいパートナー同士となれたエンディングと思いきや、そこからの短編がいろいろと予想外だったり。
日常に帰ってきて、足りない単位を稼ぐために四苦八苦したり、白雪の妹の強襲に胃を痛めてみたり、たまには健全にサッカーしてみたり。あれ、なんか妙に楽しげな学園生活じゃね? 学校やめるやめると言いつつも、割と居心地良さそうにして、アリアとの関係もあるし、心変わりもあり得るかなあと思っていたら、最後の最後でダブルパンチ。
アリアさん、物語から一旦退場? タイトルに名を冠しているのに、キンジと離ればなれになるとかって、先刻の名探偵の予知はいったい何だったの。お話を盛り上げる、ふたりの間に生まれたハードルと、いやらしい見方もできますが、当の両名にとっては割と決定打となりそうな一撃。そして、アリアの言葉を聞いて、不自然に緊張してしまったキンジ、そんなふたりの間にいきなりに、強引に、割り行ってきたのがこれまでも何気に重要そうな役回りをこなしつつも、物語の中心にやってくることがなかったレキ。
去りゆくアリアに、やってくるレキ。ヒロイン交代か!? とか思わされつつ、彼女の意味深にして不穏当な言葉は、新たな敵と、さらなる戦いを予感させられずにはいられません。そして、何よりも、アリアからキンジを奪う、略奪愛!? その真相やいかに!
hReview by ゆーいち , 2010/05/02
- 緋弾のアリア 5 (MF文庫J あ 5-8)
- 赤松中学
- メディアファクトリー 2009-12-22
コメント