誰もが等しく優遇される世界、平等な世界。そんなものはあり得ません。才能も適性も無視して平等な世界があるとすれば、それは誰もが等しく冷遇された世界。そんな平等を与えることなんて、誰にもできない。そんなものは、騙し、利用する為の甘美な嘘の中にしか存在しないんですよ。
どこか達観したような面持ちを見せる劣等生の兄と、彼に肉親以上の想いを抱える優等生の妹。一組の血の繋がった兄妹が、魔法科高校へ入学した。
成績優秀、才色兼備な妹・深雪が、主席入学生の慣例として魔法科高校の生徒会にスカウトされた。そして兄・達也も、とあるトラブルを払いのけた事件をきっかけに、違反行為を取り締まる風紀委員にスカウトされる。
[tegaki]平穏の裏に潜む闇の組織[/tegaki]
っておい! 学校内の生徒同士のいざこざで引いた前巻。今回もその延長線上の展開を予想していましたが、一気にスケールアップしてきましたよ? 国際的なテロ組織とか……。
まぁ、そんな悪人たちでさえ、主人公の達也たちをはじめとする名ばかり
敵との戦いも、危機感を覚える以前に、あっさりと決着がつくものだから、1エピソードのクライマックスにふさわしい盛り上がりを期待していたら、少々肩すかしだったかな。あくまで、今回の事件は、達也にとっては取るに足らない程度の出来事ですませて、次からが本番といわんばかりのオチでしたからねー。
と思いながら、あとがきまで読んでみたら、なるほど。感想通りの設定で、この物語は構成されているわけですね。常識化したものさしで図ることができないようなイレギュラーたちの活躍。普段は評価されなくても、ここぞというとこにはその力をいかんなく発揮する展開、確かに燃える展開です。
でも、そこに少し不満が残ってしまうのは主人公の達観したような老成したようなあるいは感動を失くしてしまったような情動でしょうかね。他者の心の機微の変化を測定して、知っても、当たり障りのない理解に留めておく。機械的に反応してるんじゃないかという言動にもやもやさせられてしまいます。まぁ、彼の心の在り様自体が、すでに一般人とは大きくかけ離れているようではあるし、彼の抱える「欠陥」もそんな異常さに繋がっているようなにおいはあるので、それを知ったときに、あらためて彼をどう思うのか、楽しみは残しておこうというところでしょうか。
hReview by ゆーいち , 2012/01/14
- 魔法科高校の劣等生〈2〉入学編(下) (電撃文庫)
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- アスキー・メディアワークス 2011-08-10
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