全国魔法科高校親善魔法競技大会。そこは毎年、全国から選りすぐりの魔法科高校生たちが集い、その若きプライドを賭けて栄光と挫折の物語を繰り広げる。今年も、もうすぐ、その幕が上がる。
『九校戦』。そこでは毎年、全国から魔法科高校生たちが集い、熾烈な魔法勝負を繰り広げていた。
七月中旬。第一高校でも、将来の魔法師候補たちによる優れた選手団が組織されていた。遠征メンバーには、『新人戦』に参加する司波深雪と、その兄・達也の姿もあった。競技に向け決意を新たにする深雪だが、一方で達也の表情は晴れず……。
『九校戦』で勝利を掴むためには、選手の運動能力の他に、もう一つ重要なファクターがある。それは、選手たちが持つCAD(術式補助演算機)の
――魔法の苦手な司波達也が、魔法の代わりに得意とする分野。
達也によって調整されたCADを手に、第一高校生徒による華麗なる圧勝劇、その幕が開く。
ちょ、あらすじでネタバレしてる!? 『第一高校生徒による華麗なる圧勝劇』って……文字通りそうなのがまた何ともいえないんですが。
一科生と二科生に実力に大きな差が存在しているというのは前回までのお話で理解済み。だけれど、全国に散らばる魔法科高校のトップクラスの実力者同士が技を競い合って、それがこうも一方的な展開になるほど第一高校の上位陣のスペックが頭抜けているとは!
いやぁ、二科生の一部の面々が規格外と思いきや、生徒会長の七草真由美さんをはじめとして、選りすぐりの参加者たちはみんな超高校級の実力の持ち主とは。チートキャラのバーゲンセールだな……。
そんな中でも、技術者としての実力を買われた達也の潜在力はまだまだ底を見せませんね。そりゃ、世界的に通用する技術者の名を裏で名乗っているなんて誰が気付こうというのか。デバイスオタクな先輩・あずささんとの談義でなにやらフラグを立ててるような気もしますけど、副業がばれたらばれたでまた大騒ぎになりそうな……。
それ以上に、達也の身に隠されている秘密の一端が明らかになったわけですが。そりゃ、ああいう性格になるのも仕方ないのかというような悲惨な境遇ですな。実験材料として扱われ、家族として迎えられることがないような冷遇ぶり。唯一の絆である深雪との繋がりは、単に仲の良い兄妹である以上に、達也の能力を縛る枷のような役目まで深雪が負っているからなのかな。けれど、ふたりにとってはむしろその繋がりこそが、この世界で唯一信じられる暖かさであるかのような孤独な考え。高校に入り、友人らしい友人を作っても、真に深い部分では友人たり得ないのではないかという不安を読む側が覚えてしまう世界からの孤立具合ですね。レオやエリカたちとバカをやってるのも満更ではなさそうな達也なだけに、それを純粋に楽しめるくらいの年相応の余裕がどこかで与えられるといいんですが。
表の舞台では一高の圧倒的な強さにも、今回ばかりは微妙に待ったがかかってる? 足を引っ張ってるのが男子側というのが切ないところですが、これは九校戦でも達也たちのわかりやすい参戦フラグと見てよさそうです? 新しく開発された術式や、戯れに作ったデバイスが下巻への伏線になってるのは間違いなさそうだし、その活躍で痛快に観客たちの度肝を抜いてくるのか楽しみですね。
裏は裏でまたしてもテロの気配。始まる前からトラブルに巻き込まれたり、一筋縄ではいかなさそうな気配が漂っていますが、達也の裏の顔――軍属としての繋がりもまた底が知れない様子なので、こりゃあ、敵さんご愁傷様な展開になりそうだなあ。
ライバルキャラのような人物も出てきてますが、この一高のチートキャラたちに対してどこまで善戦するのか、もはや勝利以前にどれだけ健闘するかを期待するしかできないあたり、いろいろとおかしいパワーバランスですよ。
hReview by ゆーいち , 2012/01/15
- 魔法科高校の劣等生〈3〉九校戦編〈上〉 (電撃文庫)
- 佐島 勤 石田 可奈
- アスキーメディアワークス 2011-11-10
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