お前たちは、触れてはならないものに手を出した。お前たちは俺の逆鱗に触れた。ただそれだけが、お前たちの消え去る理由だ。
九校戦中盤の目玉、『新人戦』。
一年生のみで繰り広げられるこの競技は、第一高校の主席生徒・司波深雪の可憐かつ優雅な勝利を披露するステージでもあった。
兄である達也も、参加選手たちが使用するCAD(術式補助演算機)の技師としてチームに参加、妹の活躍する姿に頬を緩ませていた。
劣等生であるはずの達也が調整したCADによって、第一高校生徒の華麗なる圧勝劇が演じられる中、とあるアクシデントによって彼自身も九校戦の選手として参加する羽目になる。
魔法による直接戦闘競技『モノリス・コード』に出場することになった達也。対戦相手は、『クリムゾン・プリンス』と呼ばれる第三高校一年生のエース・一条将輝だった。
[tegaki]達也・九校戦デビューす![/tegaki]
九校戦も中盤戦~終盤戦に突入する下巻。不慮の事故でなし崩し的に九校戦の『モノリス・コード』に出場することになった達也。戦闘主体の協議名だけに、彼の実力がどこまで披露されるか期待したのですが、よく考えてみたらすでに達也は大きなハンデでの参加が確定していたという。
対するのは第三高校のエース・一条将輝率いるもう一つの本命チーム。戦力的には作中の描写を見る限り三校有利な展開で進行するかと思ったらそんなことはなかったんだぜ? いや、ここにきてようやく、達也が苦戦らしい苦戦をしたというか。あくまで競技のルールの枠内で行われた戦闘だったために、互いの持つ手札のうちどれくらいが使用できたかがゆえの戦況の変化だったのでしょうけれど、達也がまともにダメージを受けた戦闘というのは今回が初めてだったんじゃないですか? ……でも、それも彼の持つ秘密の一つによってあっさりと穴を埋められてしまったわけですが。何それ。1秒で戦線復帰とかあり得ない。原理的に戦闘不能にできないというんじゃ、殺す気の攻撃を絶え間なく叩き付け続けるしかないの?
結局は、ポテンシャルにおいて彼我の差はやはり大きな開きがあったということでしょうか。十支族の一を背負う身とはいえ、あくまで人間の枠内に収まった能力では、それを大きく越える常識外の力を持たされた存在には及ぶべくもないのでしょうか。達也から見た実力者への評価としては、自分自身の力不足を実感する述懐もあるんですが、ここまで攻守共に欠陥のなさそうなイレギュラーにはどんな対抗手段があるのか、そっちの方が気になってしまいますね。
そんな中で決勝戦後の幹比古の「僕は鍛え方が足りない……」なんて的外れな実感にクスリとさせられたりしましたよ。そうだよ、それが普通の感想だよ。他の人たち、人外すぎるよ!!
けれど、達也の無双はまだ終わらない。彼の唯一の守るべきもの、妹である深雪に毛ほどの傷でも付けようとしようとしたら、恐るべき報復が待っているのですね。あらゆる感情が希薄な彼ですが、深雪に関することだけは他の事象に比べて一段以上深みのある感情を呼び起こされてきてる雰囲気。お気の毒に、テロ組織の皆さん、うっかり踏んだ虎の尾は、虎どころか龍のだったわけで、容赦なくかけらも残さず、この世から退場と相成りました。てか、達也の攻撃を別の名前で呼んでるシーンがあったけど、これって、やっぱり裏でもかなりその存在が知られてるってこと何じゃあ……悪魔的な意味で。
と、前巻では先輩たちの強さに圧倒されてしまいましたが、それはまだまだ甘かった。やはり主人公兄妹の強さは、そんな常識的なラインから大きく逸脱してしまっているという、やはりこいつらTUEEEE!な展開でしたね(笑) まぁ、達也が珍しく感情を露わにしていたのでこれまでに比べて多少は好感が持てたかな。
次は短編集。各キャラの掘り下げになるんでしょうかね。どうにも主人公たちのインパクトが強くて、他のキャラが印象に残りづらいのでここらでひとつ、強力なエピソードをお願いしたいです。
hReview by ゆーいち , 2012/01/15
- 魔法科高校の劣等生〈4〉九校戦編〈下〉 (電撃文庫)
- 佐島 勤 石田 可奈
- アスキー・メディアワークス 2011-12-10
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