バカとテストと召喚獣〈9〉

2013年4月18日

stars そういうの、イヤなんだよ……! 頑張っているのに報われないとか、努力しているのに報われないとか、そういうの!

墓穴と姦計が入り乱れた対Cクラス試召戦争。Fクラスは、なんとか初日をタイムアップで切り抜け、勝負を二日目に持ち越すことに成功した。しかし、ただでさえ低い点数をさらに減らしてしまった彼らは、いきなりピンチ状態からのスタートに! しかも、明久は風邪で不在……。どうなるCクラス戦!? この劣勢を覆すことができるヒーローはいないのか!? 「それで、話ってなんだい吉井君?」(by知的眼鏡先生)勝利を信じる心と心の絆が奇跡を呼ぶ第9巻!!

[tegaki]がんばれ男の子![/tegaki]

いや、ひさびさにガチな試召戦争を見せてもらいましたね。前巻があくまで前哨戦であったことを裏付けるように、今回は全編にわたりFクラスとCクラスのバトルが繰り広げられます。

真正面から戦っても勝ち目のない格上のクラスに対し、雄二の知謀が煌めきを見せる! という無双な展開にはならず、Cクラス側に付いた得体の知れない先輩たちの入れ知恵によって苦戦を余儀なくされるFクラスの面々。一騎当千の活躍を見せる姫路さんのモチベーションの高さはやっぱり、前巻のキス……のせいですよねー。カラー口絵でも意識しまくりだったし、うああああ、乙女でかわいいなあもう!!

今回のバトルは、戦力の要にはならずとも、作戦のキーマンを務めてきた明久が遅刻により孤立させられるという展開。どちらかというと、雄二の視点で試召戦争の推移が描かれていきますが、その集団から切り離されて独立行動を取る明久の姿はけっこう新鮮。Cクラスの悪巧み阻止のためにAクラスに身を寄せ、共同戦線を張るとかなかなかできることじゃないけれど、よく見たらペット扱いされてる明久。うん、クラスの垣根と試召戦争というルールさえなければ、学力の差は友情を育むのにはまったく影響ないんじゃないかと思わせられるほのぼのの図。むしろ、Aクラスのトップグループさえ、どこかおかしい部分を持っているという、この学園の情操教育に不安を覚えないこともないけれど(笑)

それはともかく、終盤はひさびさに熱くなりますね。Fクラスを陥れる致命的な罠に対して、指をくわえているしかない雄二と、全力で阻止に走る明久。お互い、意思の疎通は一切できなくても、こういうときに同じ方向を向いて走れるという悪友の腐れ縁の深さに胸熱です。214ページのバカテストの内容と相まって、このふたりの友情は、おいそれと他者には割り込めない強さがあるんだなと感じられる名シーンですね。ハイタッチもグッド!

と、熱いバトルと友情を堪能させられましたが、恋のバトルもいよいよ新局面? 姫路さんの変化に、さすがに美波も何かを感づくし、当の明久も彼女の不意打ちの意味を少しは理解し始めている雰囲気。そりゃ、簡単にくちびるを許すような女の子じゃないのは、明久自身もよく分かっているでしょうに、あとは一歩を踏み出す勇気があるかどうかですよね。役不足なクラスに押し込められていると、彼女の気持ちを勘違いしているフシがある明久だけに、その固定観念を打ち崩すもう一山がほしいところかな?

ここに来てショタ要員で新キャラが投入されたり、黒幕然とした3年生の先輩も何を考えているのかまだ不透明。そして、ようやく帰国した姫路さんの両親に、彼女が告げた重大ごとっぽいものは、明久との関係にどんな波紋を生むのか。物語のクライマックスはもうすぐのようです。

hReview by ゆーいち , 2012/01/29

バカとテストと召喚獣〈9〉

バカとテストと召喚獣9 (ファミ通文庫)
井上 堅二 葉賀 ユイ
エンターブレイン 2011-01-29