魔法科高校の劣等生〈7〉 横浜騒乱編〈下〉

stars 現地時間、西暦二〇九五年十月三十日午後三時三〇分。後世において人類史の転換点と評される「灼熱のハロウィン」。その発端となった「横浜事変」は、この時刻に発生したと記録されている。

横浜で催される『全国高校生魔法学論文コンペティション』。この魔法科高校生徒達の晴れ舞台に、突如謎の武装集団が侵入した。彼らの正体は、『大陸』からやってきた大亜連合軍の魔法師とその機動兵器群。目的のためには市民殺害も厭わない武装軍によって大混乱に陥る中、司馬達也は生徒会メンバーと共に窮地からの脱出を模索する。
同時刻。コンペ会場に、最新鋭魔法技術武装集団、国防陸軍第一〇一旅団独立魔装大隊が現れる。驚く七草真由美や十文字克人を尻目に、劣等生・達也は戦場の最前線へと向かうよう『命令』を受ける。訝しむ魔法科生徒達の中、
「お兄様。ご存分に」
「征ってくる」
深雪との『儀式』を終えた達也は、ついに、恐るべき“禁断の力”を解放する。

[tegaki size=”36″]世界を変える、その一撃![/tegaki]

上巻とは打って変わってほぼ全編にわたるバトル! バトル! バトル!

肝心の『全国高校生魔法学論文コンペティション』は冒頭部分でばっさり襲撃により敢えなく中断。これ、他校の理論の説明とか考えるのを省略するために、このタイミングで邪魔を入れましたよね。こういうトンデモ科学な話とかは設定見ているとわくわくするだけに、もっといろいろな外連味のある魔法理論をがっつり展開してほしかった気もしますね。

その後始まる「横浜事変」は、まさに市街戦といっていい様相を呈し、訓練された戦闘のプロである軍人たちに、魔法師であるとはいえ高校生に過ぎない達也と深雪以外の生徒たちがどう対抗するかと思ったら、数を質で圧倒すればいいじゃない! な一方的な攻防でもはや笑えてきますね。小規模な反政府勢力だとかなら装備や練度の問題で一対一なら後れを取らないのもまだ理解できますが、やれ銃器だ、やれ戦車だ、ロケットランチャーだと現代兵器を持ち出されてもびくともしない魔法師たちって一体……。いやぁ、この一戦を経なくても、戦力のバランスはもはや魔法師>軍隊の不等式が成り立っているじゃないですか。

事実上、防御も回避もできないような攻撃をされたら、そりゃあどんな装備をしていても殲滅されるしかないですよね。まさにチート。こんな戦果を上げておきながら、魔法師は戦争の道具じゃない、なんて言葉、戯れ言として切り捨てられて仕方ないんじゃないでしょうか。

極めつけはやはり達也の能力でしょう。敵を消滅させる『雲散霧消』と同様に、今回披露された究極の回復魔法『再成』。敵は防御不能のまま一撃で倒され、見方は致命傷を負ったとしても一瞬で回復できる。大きなリスクが存在する『再成』だけれど、達也自身の自らのをコントロールする能力の高さを見ると、その仕様を躊躇するほどの枷になっていないようにも見えるんですけれど。深雪による、能力解放の儀式が行われなければ使用不能な気もしますけれど、このような戦時においては多数の戦力を投入するよりも、達也が所属する魔装大隊と十氏族のトップ、プラスアルファで十分に一国を落とせそうな雰囲気なんですが、他国はこの異常な戦力をどう見ているんでしょうかね。日本だけが突出した魔法技術を持っているわけではなさそうだけれど、人材、技術において、達也らに伍するような人材がほいほい転がっているとは考えにくいです。雪辱戦に臨んだ近接戦最強の一角ともいわれていた呂でさえ、学生たちの連携の前にはあっさりといっていいくらいに敗れてしまったし、今までは本気で魔法師たちの戦力の危険性を検討していなかった各国軍部が痛烈な一撃で目を覚まさせられたといったところなんでしょうか。

終盤で披露した達也の禁じ手『質量爆散』に至っては核をも凌ぐ兵器を個人が手にしているのと同義ですよ。対人戦にはまったく役に立たない魔法でも、戦略兵器としてはこれ以上ないくらいの脅威。はるか離れた場所でさえも照準し、引き金を引くことでタイムラグなくその場所を消滅させられるとか、この力があるだけで世界を手に入れることだって容易にできそうなものなのに。その辺の理由付けなども、語られるときは来るのでしょうかね。まだ、司波兄妹を縛る鎖の全容は見通せていないように思いますし。

この、恐るべき一方的な殲滅劇を機に世界は変わるといいます。けれど、魔法師の戦略的な価値がここまで広く知られてしまった結果、彼らへの風当たりは恐れからより強くなる道しかあり得ない気がします。けれど、その先に栄光があるというのなら、どれだけの屍山血河を越えてそこへとたどり着けるというのでしょう。魔法師の命運を左右するほどの力を見せた達也と、深雪。そもそも、特異すぎる四葉の一族がこれからの物語で、世界の中で、どのような立ち回りを見せるのか、続きを待ちたいと思います。

hReview by ゆーいち , 2012/10/21

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魔法科高校の劣等生(7) 横浜騒乱編<下> (電撃文庫)
佐島勤 石田可奈
アスキー・メディアワークス 2012-09-07

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