オレを二つ名で呼ばないで!

stars 入学二日目。オレの輝かしい学園生活は――いま、終わりを告げた。

――俺、御手洗新は悩んでいた。今日、学園のシステムに登録すれば、憧れの〈二つ名〉が手に入る。ギリギリまでカッコイイ名前を考えて申請に向かった俺だったが、既に俺の〈二つ名〉は登録されていた!?
屈辱的な二つ名がついてしまった俺は、優勝者の願いをなんでもひとつ叶えるという〈黄金杯〉での優勝を目指すことにした。
第3回『このライトノベルがすごい!』大賞・優秀賞の学園異能力アクション堂々スタート!

[tegaki font=”marugothic.ttf” size=”36″ color=”LightSeaGreen”]その〈二つ名〉は体を表す!?[/tegaki]

普通、〈二つ名〉なんてものは、有名になる過程で自然発生的に付けられるものですが、このお話ではまず〈二つ名〉ありきで物語が組み立てられてるんですね。二つ名エリアスシステムという、〈二つ名〉に応じて個別の異能が与えられる試験校。余りに不名誉な〈二つ名〉を与えられた主人公が、なんとか新しい〈二つ名〉を得るために、異能を使った格闘戦に臨むというストーリー。

いや、読みだけなら格好いいんじゃないですか? 『噛ませ犬エンハンサー』。字面はダメダメですが。自分以外の能力を増幅するというなんともバトル系には使い勝手の悪そうな力ですが、それを何とかしながら〈黄金杯〉の頂点を目指していく。主人公の新以外にも様々な能力持ちがどんどん現れてきて、こりゃあ能力考えるだけでも一苦労だろうなあととか思いつつ、使い勝手が良かったり悪かったり、単純に名前だけでその能力の善し悪しが決まるわけじゃないあたりに、作者のバランス感覚が見えますねー。『噛ませ犬』なんてなんまですが、『絶対無敵』と付けるつもりがシステムの都合で『絶体無的』とか字が変えられてしかも読みがナイジンオーとか、特定の世代以上じゃないと通じないネタじゃないですかーやだー!

まぁ、悲惨な二つ名付けられていますが、主人公の新はいたって好感度の高いさわやかな感じの主人公ですよね。この手の学園ラブコメもの主人公の例に漏れず、やや他者の好意に鈍感で、むやみやたらにフラグを立てまくってるのは、もうちょい個性がほしいところですが、すでに幼なじみの美少女の瑞帆さん侍らせている時点で勝ち組じゃないか爆発しろ! その上、剣術少女の静華さんやらロリ担当の美美さんにも、無自覚にくらりとするような言葉と態度を見せてくれたり、彼の周辺の女の子はやはり気苦労絶えない感じになりそうですねー。とはいえ、ラブコメ要素はそんなに強くなく、どちらかというとシリーズの導入部という印象を受けるストーリーでしたが。

何かを強くするという能力を、自分が身につけているものや道具、他者の能力にまで拡張できることに気付いてからの新は、持ち前の合気道の腕もあってなかなかの強者。単純な戦闘力だけで見ると結構上位に食い込みそうなのを、能力の使い勝手で相殺されている感じかなあ。それもまた、奥の手的なシステムの隠し能力の発動でピンチを乗り切ったりと、盛り上げ方は上手いなあと。その発動条件も、噛ませ犬なんて情けない名前からはなかなか思いつかないような主人公らしいものだし。

バトルものの要素も結構ありますが、基本的に傷付いたり命をかけたりなんて、危険からは縁遠くてスポーツ感覚なせいか、終始、明るい感じでお話は進行しますね。ラストバトル後の微妙に因縁めいた対決自体も、暗い部分を見せることなく終わったりと、気軽に楽しめる内容でした。エピローグ前の会話とか見ていると、なにやらシリアス要素も感じられますが一体どうなることやら。

最後の最後で、これまたひどいオチが付いて笑わせてもらいましたが、これ、瑞帆さん、狙ってやってますよね。なんか、これまで以上に最低な扱いを受けそうな名前をもらってしまいましたが、なんだかんだでクラスメイトに恵まれてる主人公、強く生きてくれるよね(笑)

hReview by ゆーいち , 2012/10/28

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