デート・ア・ライブ〈4〉 五河シスター

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最悪の精霊、狂三を救ってみせると、そして真那も救ってみせると、言いながら結局、士道は何もできなかった。
もし、あのとき五河琴里が現れなければ全ては終わっていた。
「今から五年前。――私は精霊になった。士道の回復能力はもともと私の力よ」
琴里の口から告げられる真実。彼女が精霊になり。士道が初めて精霊を封印し。折紙の両親が精霊に殺された五年前の事件。
「今日で私は私でなくなる。その前に、おにーちゃんとのデートを」
タイムリミットはたった一日。可愛い妹で、苛烈で強気な司令官を救うため、デートして、デレさせろ!?

来た! 妹ルート来た!! これで勝る!

ああ、1巻で苦手だなあと思っていた自分は何だったのか。巻を追うごとに、隠しきれない兄LOVE!なオーラが琴里を可愛くしているように思えます。前巻の凶悪な引き。琴里が精霊であったこと、士道の中にある回復能力は、彼女の力であったこと。そして5年前の謎だった出来事が明かされ、ストーリーがぐっと進展した巻でした。

狂三の扱いについては……。結局、士道は、自分がなんとかしてやろうと思ったことを成し遂げることはできず、精霊と人間の間にある決定的な断絶を思い知らされたのかも知れません。もともと、人間同士でさえ分かり合うことのできない相手がいるもの。それを、あらゆる意味で存在が違う人間と精霊の間で、例外なく分かり合えると思ったら大間違いという手痛い失敗でもありますね。もっとも、どんなキャラでも攻略させてあげるかと思ったら大間違いなんだからねっ! という神の声が聞こえたような聞こえなかったような?

ともあれ、今回は琴里ルート。精霊の力を取りもどし、けれど、そのままでは自分が自分でいられなくなってしまうという割とシビアな状況。彼女を文字通り救うためには、妹をデレさせ、キスをしなければ……。ああ、十香はまだしも、けっこうなロリキャラの四糸乃を攻略し、そしてその次は義理とはいえ妹ですか。琴里の命は救うことができても、社会的に士道が死んでしまいそうな高難度ルートではないですか(笑)

琴里にしても、どんな気持ちで相手をしていたんでしょうね。いや、最後の最後に種明かしで、彼女が士道をどんな風に想っているのか一目瞭然ではあるんですが、命がかかった事態とはいえ、もしかしたら大手を振ってデートができる最後のチャンスかも知れないということに、彼女はも少しだけ浮き足立っていたのかなあとか想像するとにやにやが止まりませんね!

しかし、そんな彼女を攻略しようにも、〈ラタトスク〉の手助けはむしろジャマだったんじゃないかというツッコミが。というか状況判断して選択肢を提示するAIがバカなの? 死ぬの? な精度の選択肢を提示するものだから、士道が茨の道を歩んでいる気がしてなりません。今回にいたっては、彼自身の方が琴里のことを知っているのに、いちいちサポートしようとするとか。はっ、もしかしたら、これは〈ラタトスク〉の陰謀!? いや、単に、大好きな司令官がデレるところをちょー見たがっていただけな気がします……。

そして、やはり、鳶一さんの過去と、五河兄妹の過去が交わってしまいましたね。この辺、かなりシリアス。家族の仇を討つために生きてきた鳶一さんの悲壮な叫びが痛いですね。ここまでデートで盛り上がっていたふたりに冷水を浴びせる展開。琴里にしても、自分が誰かを殺めたという記憶がないだけで、そうするだけの力も理由も精霊という存在は備えているだけに否定もできず。ただ、ふたりを取り返しの付かない選択から救おうとする士道の行動だけが希望です。鳶一さんにしても、恋より自分の使命を選んだり単なる恋ボケなキャラではなく、そして、次に自分が狙わなければならない対象が、その愛しい士道になってしまったこと、そのことに大いに悩む展開クルー?

そんな危機一髪の事態を回収する士道の殺し文句がスゴくいい。妹に面と向かって愛を叫ぶ士道さんマジイケメン。そして、そんな不足な事態に強気キャラの仮面も吹き飛ばされ素直な言葉をこぼす琴里かわいいよ琴里。今までの、なし崩し的なキスシーンとは違って、お互いがお互いを好いているという告白の後なだけに、大変にやけさせてもらいました。やけっぱちに好きと連呼する琴里の姿を見たら、部下一同鼻血の海に沈むこと間違いなし……!

そうして脱した喫緊の危機。けれど、狂三の登場で世界に差し迫っている危険はまだ回避されていないんですよね。傷付いた彼女も、傷を癒し、再び士道を狙うのは確かだし、その背後にいる『何か』は、きっと5年前の『何か』と同じもののよう。それが精霊なのだとしたら、狂三の目的を後押しするのは自分の首を絞めているようなもの。しかし、それの目的が5年前に琴里を精霊化させたことも、士道に精霊の力を封印する能力を与えたことも、そして狂三に協力していることも、どれもが同じことに通じているのだとしたら、その目的がどんなものにしろ、ロクでもないことになりそうですね……。

そんな危機感溢れる狂三の姿とは正反対に、ようやく一息付けた士道たちの様子は微笑ましい。ああ、そうだよなあ、琴里は最初っから最後まで分かっていて付き合っていたんだと。すぐに封印してもらっても全然OKだったのだと。でも、最初で最後のデートのチャンスをフイにするのは惜しかったのだと。あれ、あらすじで感じていた悲壮感がどこにもないですよ? 何このかわいい妹、5年前からずっと好感度マックスだったんじゃない! 強くなるという言葉の意味を取り違えて強くなり過ぎちゃったけど、もう、士道の前では下手なポーカーフェイスも通用しそうにないくらい、気持ち知られちゃいましたね。もう、ヒロインでいいんじゃね? 真那との関係はさらに修羅の道確定ですね(笑)

hReview by ゆーいち , 2013/03/30