バカとテストと召喚獣〈11〉

2013年4月18日

stars 発言力とか、協力態勢とか、そんな細かいことを気にする必要はねえ。従わない連中がいるなら脅迫でも暗殺でも何でもやって従わせてやる。それが俺の――Fクラスのやり方だ。

バカとテストと召喚獣〈11〉 書影大

Aクラスとの勝負に水をさされてしまった明久たちFクラス。しかも今度は二年生vs三年生の試召戦争!?
抗議も虚しく結局三年生に挑むことになってしまった二年生は、各クラス代表で会議を行うことに……。
しかし「卑怯汚いは敗者の戯言」をモットーに勝ち抜いてきたFクラスへの風当たりは厳しく主導権を得られぬまま試召戦当日に――。
「死になさいピッグマン! 」「アキちゃん、お着替えしよ?」まさに勝敗は予測不能!?
遂にクライマックス突入の第11巻!!

あと一歩で勝利という所までAクラスを追い詰めたFクラスなのに、ババァ長に水を差されて勝負が流れてしまった前巻。いやぁ、あの不満がたまっているのか各キャラの行動の気に入らないこと気に入らないこと。そもそも、学園長が教育者として適当かどうかという根本的な疑念もさすがにここまでくると浮かんできますが、学園のトップでさえも、目に見えない「大人の事情」というものに抗うことができず、駒扱いされていそうなのが何とも。

姫路さんを巡る策謀が裏で動いているのは確かだけれど、おバカなFクラスの面々は目の前の気に入らない敵を倒すことが最優先。いや、それ間違ってないので、全力でやっちゃいなさい! と応援したいところですが、今回はちょっとばかり勝手が違う。

学年対抗の試召戦争。成績の良いも悪いもひっくるめての最大規模の戦いに無理矢理参加させられることになってしまい。それこそ大人の事情な感じがしてしまいますが、そもそも、この学園の特異なシステム構築を主導した意志決定者の姿が見えないだけに、何もかもが手のひらの上、な印象にもなってしまいますね。加えて相手はいけ好かない髙城先輩を代表にした三年生勢。因縁のある常夏先輩とかもいるんですよねえ。おバカな対戦がウリだったはずなのに、この勝負は絶体に負けられない文字通りの真剣勝負の様相ががが? 思わせぶりな言動のリンネくんもまたうさんくさいことこの上ないし、なんだかもやもや。

実際、始まった戦いも、慣れない人員編成で苦戦というか足の引っ張り合いというか。個性的すぎるFクラスの面々を率いることができるのは、やはり雄二をおいて他にはいないという当たり前の事実を今さら突き付けられる格好。いつのもメンバーに追加で入った美春やら玉野さんやらの鬱陶しいこと鬱陶しいこと。さすが、変人揃いの二年生。敵に回すと面白いが、味方にするとここまでうざいとは……ッ! その最たるものが代表同士の合議制で意志決定をせざるを得なくなった二年代表たちの駆け引きですが。勝利を優先するよりも自分の願望を優先してしまう根本君やら小山さんやらのいやらしい駆け引きは正直苦痛。こういうハンデがなければ、もっと戦いの流れは二年生に有利になったような気もしますが、この状況を作り出すこと自体、誘導されてきたフシもありますし、戦う前から不利な状況に追い込まれてきていたともいえるんですよねえ。

とばっちりを食った翔子さんやら、本領であるフリーダムな行動を封じられた雄二の苦悩する姿はらしくなくて。何よりも、勝利にこだわる余りに、らしくない行動を取ってしまう翔子さんの様子はもはや痛々しいまで。これまで、どんな状況でも他のキャラの上を行っていたような二年生最強キャラも、今回ばかりは冷静ではいられない。雄二との絆さえも、勝敗の行方にかかっているとあっては、大局的な判断力を失ってしまうくらい焦ってしまうのも仕方ないのかもしれませんね。雄二が望んだことでないにせよ、ただただ一途に彼を想ってきた翔子さんにとって、この勝負がどれだけ重みのあるものなのか、それがのしかかる終盤です。

そして、こんなピンチに陥ってから、ようやくバカテスらしい熱いのりが帰ってきました! 不格好だけれど、一世一代の雄二の告白。どれだけの時間、彼女を待たせたかなんて語るまでもないですが、6年という時間の長さは、お互いの絆の深さとイコールで。ああ、もう、あれだけ、尻に敷かれるのを嫌がっていたのは単純に自分から告白するチャンスを逸してしまったことを恥じているからなんだ、なんて明久をはじめ、他のキャラも呆れるくらいの愚直さです。というか、とっくの昔に相思相愛になっていたのに、どれだけ遠回りしているのやらこの二人は、明久と、姫路さん、美波の関係もそうだけれど、やきもきさせられる二人の関係がようやく動き始めたと確信できる名シーンですね。最後の数ページは、これまでの鬱憤を見事に吹き飛ばしてくれるくらいの、胸のすく、屈指の名シーンですよ。

ラストエピソードもいよいよ終盤。物語もあと一冊で完結といったところでしょうか。まだ決着の付いてない大一番も、もはや負ける気のしない無敵感満載です。これまでの不満を吹き飛ばしてくれる痛快な逆転劇をぜひ見せてほしいですね。

hReview by ゆーいち , 2013/03/31

バカとテストと召喚獣〈11〉

バカとテストと召喚獣11 (ファミ通文庫)
井上堅二 葉賀ユイ
エンターブレイン 2013-03-30