――戦え。おっぱいをかけて戦え。そんな声が聞こえた。
「裏切らない、おっぱいは裏切らない」
「失敗して灰色の生活を送るのは嫌だ」
「出し抜こうと動いている人間がいる」
――揉むか揉まれるか。〈夢と希望〉、そして〈絶望〉が表裏一体となった伝説のゲームが幕を開ける!
『扉の外』『アトリウムの恋人』の土橋真二郎が贈る、最新〈ゲーム〉小説!
こ、これは、バカすぎる!
土橋真二郎の過去作品のノリを期待している読者が大半のはずなのに、それを思い切り裏切ってくれる内容に苦笑。というか、あらすじで察しろということでしょうが、その裏にどんなデスゲームが展開するか期待していたのにやだー。
はい、そういうわけで、おっぱいとパンツが嫌いな男子なんていません! な、中高生のリビドー溢れる妄想を具現化したような内容に呆れるやら笑うやら。ほら、そのうち、自分で自由にできるおっぱいが見つかるよ、とかドヤ顔で肩をぽんと叩いてボコられるような作中の登場人物になりたくはないですが、まぁ、リアルでも機会はあるよ、きっと。
まぁ、そんなわけで、一発芸的な題材なので、さすがにこの物語をシリーズ展開することはないと思いたい。ないですよね。もっと、ひりつくような、ぎりぎりの緊張感での戦いが見たいんですよ。命を賭けて、そして、さらに相手の裏の裏をかくような心理戦が見たいんですよ。その過程でお色気があったりしたら全然オッケーですが、最終目標が性的なアレというのは、少し物足りない。そもそも、土橋作品の女の子っていうのは、自分の見てくれとか女という性別さえも武器にして、男を出し抜くような、油断ならない悪女的なキャラにも魅力があるだけに、今回のお話では、女子の面々というのは結局のところ、男子の側から欲望をぶつけられる役に終始している感じで残念至極なんですよねえ。
メインどころの唯とかまどかとか、先輩の千種とかキャラ立ちしていながらも主人公たちの側に踏み込んでくるような扱いもなく、距離も縮んだ雰囲気があんまりないのがもったいない。ああ、あくまで、この〈ゲーム〉に乗じて分かってやってますよってポーズなんでしょうか。そもそも、自分のパンツをその場のノリとはいえ平気で見せるような女の子ばかりの舞台設定なんてどこかおかしい! というか、先輩が仕掛ける性的なレクリエーションなんてあるわけないぞうらやまけしからん! と、ツッコミどころの世界観になっているのは狙ってるんでしょうかねえ。
期待していたのとかなり違うお話でしたが、たまにはこういうおバカ路線もありといえばありなんでしょうか。逆に、こういう方向性で作品を書いていくという転換点となるとしたらもったいなすぎるので、次はまたシリアスなゲームを描いてもらいたいなと思うのです。
でも、おっぱいには夢がありますよね……うん。
hReview by ゆーいち , 2013/04/16
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