俺が生きる意味 2 放課後のリゾルト

2013年4月23日

stars 諦めとは、精神が選んだ選択肢の一つ。世界が選んだ結果でも、元来君がたどるべき道とも違う。それでも君は目を閉じ続けるのかい? 手を伸ばせば、すぐそこに希望はあるというのに。それに気づきもしないで――。この世は絶対で構成されている。だからこそ、この世に絶対はないんだよ。

俺が生きる意味 2 放課後のリゾルト 書影大

そして、少年少女たちは、戦うことを決意する――。
突如現れた“見えない壁”により、“人喰いの化け物”が徘徊する学校に取り残されてしまった斗和たち。生徒たちが次々と捕食され、無惨な死を遂げていくなか、ついには斗和自身も化け物に捕獲されてしまう。だが、そのとき新たな変化が巻き起こる――!?
高校を舞台とした「放課後」編の後編、ここにあり。不条理な環境の中、人類は最後まで生き残ることができるのか?
戦慄のパニックホラー作品第二巻!! 衝撃の結末が脳髄を貫く!!

いつから、主要なキャラクターが死なないと錯覚していた?

いや、前巻のラストでは斗和がどうなるかどうか非常に気になる引きで続いていましたが、さすがに、物語の主人公(?)が早々に退場するとか、そんな大がかりな仕掛けが施されているわけではなかった。

……そう考えていた時期が私にもありました。

うわああああああ、なんだこの後味の悪さはっ。読者の皆様の中に『救い』をお持ちの方はいらっしゃいませんかー!? と思わず現実逃避したくなるくらいには救いがないオチに軽く絶望。死んでも生き残っても、その先でさらにもう一段落とされるとかどんだけこの世界歪んでるんですか。

もうね、章が終わりに近づく度に怒濤の展開で先が気になること気になること。メインヒロインがどちらになるかとかか、赤い娘と青い娘の斗和を巡っての恋のさや当てとか、期待した私がバカでしたスミマセン。もう、189ページ見た瞬間に数秒はフリーズしましたね、ええ。それまでも、前巻を何とか生き残って、チームとしてこの苦境から脱出しようと連帯感が生まれてきた矢先に次々に退場していったりと、容赦なく人が死んでいく甘い考えを一切許さない鬼のような展開に悪い予感はあったんですが、最悪の上にはさらに最悪があったようでしたわ。

序盤、赤峰さんが覚醒していきなり異能バトルに突入して妙な雰囲気に戸惑いもしましたが、そんな人間側の優位も長く続くことはなく、一人また一人とあっけなく退場していく生徒たち。なんだかんだで生き残るだろうなと思っていた斗和の悪友の卓二さえも、本当にあっさりと退場して、この物語の落とし所が、全滅デッドエンドかと頭をよぎったりしましたが、そんなことはなかったんだぜ。

でも、ある意味では全滅した方がマシだったかも知れないようなえげつない描写が斗和に突き付けられたりしますけれど。

物語は、斗和が赤峰と青葉両者のどちらかの呼び出しを受ける所から始まり、そして、結末は、彼が選んだと思っていた少女のもとで向かえることになります。そうしてみると、始まりから終わりまでを象徴するような瑠璃色が、落ちないシミのように頭にこびりついてしまって仕方ありませんね。どこかおかしな雰囲気を漂わせていた彼女の、その本質が明かされる部分とか、あまりの救いのなさに絶句するしかありませんでした。斗和の方はそれでも生きることを諦めず、そして、生きるために人であることにすら頓着しない切り替えの素早さを発揮して生き延びることができましたが、他の人物だったら、まず最後のトラップで退場確定だよなあとか諦め混じりに読んでいましたよ。

冷静沈着に見えた斗和にしても、物語が進むにつれそんな余裕もなくなり、失ったものと積もった憎しみの重みで理性より野性を見せる場面が増えていったのが印象的でしたね。異界と化した学校という空間で、自分たちが人間であるということにこだわりすぎていたために避けられなかった惨劇。すでに相手のフィールドにいるのに、書き換わったルールに気づけなかったための悲劇。それを越えてようやく反撃へと至っても、そこにあるのは化け物を駆逐する爽快感も開放感もなく、ただ、生きるための血なまぐさい戦いが延々と続く地獄のような世界は変わらずに。けれど、生態系の頂点から転げ落ちたはずの人間が、それに成り代わった化け物たちと戦うだけの力を失っていないという確信の元に、戦いは一方が一方を狩るものではなく、生き残るものを決めるある意味対等なものへと変わったともいえるのかもしれませんね。とはいえ、生き残るだけの力を持つ者は少なく、それも極めて特殊な、あるいは異常ともいえる人間しか残ることができなかったという結果は、何かが動き始めたこの世界で希望には繋がらない気もしますが。

オチを見る限り、超常的な現象が絡んでいるようで、この惨劇を覆す流れもゼロではないのかなとも思えますが、黒幕たちが、ハッピーエンドと称している未来が、果たして人間達にとっての幸福とイコールなのかはなはだ疑問ですね。2000年前というキーワードが再び登場しましたが、そこにこの世界の謎の根幹が隠されているんですね。

売上次第でその謎が明かされるか闇に葬られるのか決まるというのはなんとも世知辛い話ですが、是非とも売れて3巻以降も読んでみたい物語です。あとがき見るとメインキャラはそこから登場とかって書いてあるんですが、斗和ェ……。師匠の謎とかも残ってるんで、ほんと気になりますから、頑張って次も出してくださいお願いします。

余談。青髪ショートの娘の名前がさやかって……。不憫な娘っ! そもそもこの世界にまどマギがあったとか、ますます訳分からんわ(笑)

hReview by ゆーいち , 2013/04/18

俺が生きる意味 2 放課後のリゾルト

俺が生きる意味 2 放課後のリゾルト (ガガガ文庫)
赤月 カケヤ しらび
小学館 2013-04-18