よろず屋退魔士の返済計画〈1〉 100億の契約書

stars 人間一人で生きて、一人で死のうって思っても、そうそうままならないもんよ。だったらさ、そのままならないのを楽しんじゃわなきゃ。

よろず屋退魔士の返済計画〈1〉 100億の契約書 書影大

「おめでとう、わたしの一生をかけて、オマエを使い尽くしてあげよう」
退魔の名門「神堂家」から破門され、かつて住んだ家に戻った追儺狗朗を待っていたのは幼馴染の九十九みぎりと100億円という莫大な借金だった。
破門された身のため、退魔士として依頼を受けることができない狗朗だったが、みぎりの発案により「死者専門の何でも屋」を開業することに。
しかし舞い込む依頼は死者のしょうもない心残りなど、どれもひとクセあるものばかり。
更には神堂家からも後輩にあたる退魔士、葛が追いかけてきて!?
退魔士の少年と暴君少女が始める借金返済コメディ、ここに開幕!

100億の借金のカタに身体ごと売られた主人公・狗朗の借金返済への苦難の道!

あれー、でも、ご主人様が幼なじみの美少女で、あれこれ命令してくれるなんて、ご褒美じゃないんですか? 性的な意味で。

主人公の生い立ちが悲惨すぎるくせに、まっすぐ育った狗朗は、どちらかというとあれこれ抱え込んでしまうタイプなんでしょうか。修羅場をくぐって一人で生きることになれている風でいて、けれど、みぎりとのやりとりが、長年別れていたことを感じさせないくらいに自然にできる程度には人なつっこい感じ。名門のお山で修行に明け暮れていた時期も、一方的にライバル視してくる後輩の葛とかとのコミュニケーションは取れてたってことなんでしょうけど、やはり鈍感な性質のせいか女の子の心の機微には疎いようで……。

100億なんていう桁違いの借金を背負わされ、さらにはみぎり専属の奴隷になったようなものなのに、この明るい雰囲気はなんなんだろう。そもそも、最底辺の境遇だった狗朗からしたら、衣食住揃ってさらに働くアテも得られたのなら万々歳といったところなんでしょうか。みぎりとのドタバタ漫才をしながら、パトロンから金を巻き上げ仕事をこなして借金完済を目指す! でも、100万ずつ返済していっても、ざっと1万件の案件をこなさないといけないんですよね……(遠い目

それでも面白おかしい仕事の先に、待っていますは大事件。狗朗の過去にまつわる話と、そしてそこから繋がるみぎりとの絆の話。父親はどうしようもない駄目人間で外道でも、母親からはしっかり愛情を注がれ生まれてきてたという証。そもそも、彼の母方の血縁者も自分の立場がなければどれだけ甘やかしていただろうって位には愛してそうだし、気付いてないだけで、狗朗、彼を想ってくれる人っていうのは少なからず周囲にいるんじゃないんですかね。恋ごころとライバル心をごっちゃにしつつ女の子してる葛も、ドSっぷりを存分に発揮しつつも狗朗からの言葉やら態度やらに時折狼狽するみぎりも可愛い。さらにはロリババアも登場して妙な属性持ちに好かれる主人公の先行きは明るい……?

命がけの大事件を経ても、借金完済へはようやく1割とか、どれだけ修羅場をくぐれば自由になるのやら。まだまだ続く死人相手のよろず屋家業。次はどんな依頼人が待ち受けているのやら。

あとは、行方知れずの父親の登場とかも普通にありそうですね。外道の家の外道の極みの父親。どんな人物なのか気になりますが、とことんゲスだったらあんないい母親が惚れるわけないだろうから、どこかずれた部分でゲスい感じなのかなあ。狗朗の中にある黒い感情とかの描写を見ると決して軽いことではなさそうだけれど、そういうシリアス展開も個人的には好みですのでどんとこい!

あー、それとツッコミが一点。100万の仕事30件こなしたら借金返済は約3000万ですよねえ。そこの計算中盤から間違えっぱなし……。重版かかったら訂正されるのかな。

hReview by ゆーいち , 2013/04/29