映画「ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」 感想 ネタバレあり 0から1へ その先へ

2019年7月20日

ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow

公開から1週間遅れでようや観てきました。
「ラブライブ!」というコンテンツは、アニメメインで見ていて、リアルでの活動や雑誌での展開その他諸々はほとんど追っていないのですが、それでも劇場版はとても楽しい体験でした。

最近の劇場アニメは冒頭公開しているのでいいですね。もっとも、これを見る前に劇場に行きましたが(笑)

ラブライブ!サンシャイン!! 劇場撮影会 渡辺曜

本編開始前の撮影会では渡辺曜さんでした。これは週替わりとかなのかな? 個人でコンプリートするのは大変そう。また、入場特典は桜内梨子さんでした。

さて、そんな感じで観てきました映画の感想をつらつらと。

Aqoursの新たなスタート

物語はTVシリーズでほとんど大団円になっているとはいえ、スクールアイドルとしてのAqoursの顛末を語るには欠かせないエピーソードとなった本劇場版。
どうしても前作、いわゆる無印ラブライブ!の劇場版と比較してしまう自分がいますし、おそらくスタッフもそれを織り込み済みで、この物語を作りあげてるんだろうなと思わされる場面も多かったです。
そういう意味では、TVシリーズ内で単なるμ’sに憧れてスクールアイドルを志したAqoursが、彼女たち自身の輝き方を見いだし、新しい物語を描いたことを考えると、本作でのストーリーについても、物語の構成は似ていつつも、彼女たちの選択は前作とは異なり、さらに未来を見据えたまだまだ終わらないストーリーの節目であるというように感じました。

廃校は阻止できなかったものの、ラブライブ!優勝を果たしスクールアイドルの歴史に名を刻んだAqoursという存在。
けれど、限られた時間の中で活動するスクールアイドルだからこそ避けられない、メンバーの卒業という課題に、同答えを出すのかがストーリーの柱のひとつでした。
振り返ってみると、この課題にはμ’sはTVシリーズ内で答えを出し、その回答を描いたのが劇場版だったわけですが、Aqoursについては3年生の卒業という現実が彼女たちにどんな変化をもたらすのかを突き付け、そこからAqoursとしての答えを見つけ出すまでの1本の映画で描いているんですよね。
「ラブライブ!サンシャイン!!」自体が「0から1へ」という言葉をとても大切にしてきたことを思うと、この劇場版のストーリーについても、せっかく出した結果をもってしても0に戻されてしまい、そこからどう一歩を踏み出すかという問題に向き合わされる構図になっていたように思います。

編入先の学校との問題も、3年生の卒業という別れも、妹という立場のルビィと理亞の成長も、ここからを新たなスタートとして未来を感じさせる展開と結末となっていました。

特にAqoursが継続していくという答えを出したことがμ’sの結論とは正反対で、μ’sが「今が最高」と歌い9人であることにこだわったのに対し、Aqoursはメンバーの思いを受け継ぎながら、形を変えても存続を選ぶという選択。
これは現実世界のアイドルグループのような、それこそ現実的な結論ではありますが、Aqoursのスタートが本来3年生3人によるものであり、その後9人のメンバーになったという経緯があるだけに、9人にこだわるよりも、スクールアイドル活動を通して輝くことを目指したがゆえの結論だったのでしょうか。
最大の目的を果たし、さて、そこから次に何を目指していこうと思ったときに、自分たちが歩んできた道がどんなものだったか振り返ると、そこに居たのは自分たちだけでなく、支えてくれた人たちだったり、育んでくれた土地だったり、それこそみんなで作ってきた思い出だったりしたわけで。

作中で千歌が語っている自分たちの輝きの形がどんなものなのかの答え。1が0になっても、心は残っている。全部が全部なくなるわけではないという思いこそが、彼女たちだけの答え。
前シリーズとは違う結末を用意しないとなんていうメタ的な作劇の都合はともかくとして、Aqoursが出したこの答えはよりアイドルらしい結論だったんじゃないでしょうか。

ラストシーンはこの物語が先へ続いているということよ予感される眩しいシーン。あの地の海岸でああいう会話がされたということは、すてきな未来に繋がっていったということで、良いんですよね?

姉から妹へ繋いでいく想い

登場人物全員が大きな役割を与えられるかといえば、それはなかなか難しく、どうしても限られた時間の中で描きたいテーマに従うと、その出番は大きな差が生まれてしまいますね。

ダイヤさんとルビィ、聖良と理亞という両グループの姉妹の絆も、ひとつの大きなテーマだったように思います。

卒業していく姉と、残されスクールアイドルとして活動を続けていかなければならない妹。
残される側の成長を描くという中盤(あるいは作中では最も盛り上がったかもしれない)の「ラブライブ!決勝延長戦」は震えるものがありましたね。というか、SaintSnowの楽曲気合い入りまくりで見入ってしまいました。

間違いなく劇中で優遇されていたルビィはテレビシリーズの弱々しいマスコット的な立場からもっとも成長したキャラクターだったんじゃないですかね?
ルビィもそうですが1年生ズの扱いはギャグシーンとかも多かったですが優遇されていたような。
この辺、推しのキャラによってはもやもやした人もいたようなのをネットの感想で見たりしましたが、こればっかりはどうしようもない部分ではありますね。

スクールアイドルたちの残したもの

以下はちょっと気になったことというか。

スクールアイドルという概念は、作中においては無印のエピソードを経てかなり市民権を得たと思っていたんですが、この劇中ではまだまだ「知る人ぞ知る」ってレベルだったってコトでしょうか。

スクールアイドルで廃校を免れるなんて奇跡を夢見ちゃうくらいには、メジャーな部活動(?)となっているかと思ったら、そんなこともないようだし、この辺の冷めた部分を劇中のハードルとして描いていたのは意外というかモヤッとした部分でしたね。
もともと、ポジティブにスクールアイドル活動が肯定されてきていたラブライブ!世界で、割と大人の事情というかリアルな現実的な否定的意見が立ちはだかってきたりして、前作で伝えようとした「スクールアイドルの素晴らしさ」の輝きが翳ってしまっているという部分がなんともいえず切なくなってしまいました。

まぁ、そんな部分もパフォーマンスで覆してみせるなんていうのも、ご都合ですがスカッとはします。欲をいうなら3年生たちの抱えた問題と、星の浦女学院の統合先に認められるためのハードルが、ほぼ同じものだったというのは「またか……」みたいな印象と、解決までの道のりがあっさりすぎるというので盛り上がりとしてはそこまでではないというのが、やや残念かなといったところです。

大団円、そしてリスタート

自分たちだけの輝きを目指して走り抜けてきたAqoursのストーリーもここで一段落。
伝説的な先達に憧れ、スクールアイドルを目指した彼女たちも、最後には目標とされるくらいに輝きを放つ存在となったようですね。
思いを継いでいくというスクールアイドルの形を示し、それに続く人たちが出てきたという点で、スクールアイドルの歴史に刻まれる存在になったんでしょうか。
様々な可能性を予感させるラストシーンは、これで終わりという感じがまったくしないので、今後のスピンオフなどもあると嬉しいなと、そんな風に思いました。

0と1を繰り返しながら、その先を、輝きを目指し続けたAqoursのストーリーの集大成となる本作。堪能させていただきました。

Aqours(アクア)/僕らの走ってきた道は…/Next SPARKLING!! [CD] 2019/1/23発売 LACM-14831