コミック感想:五等分の花嫁(10) それぞれの恋のカタチ・想いのカタチ ネタバレあり

五等分の花嫁(10)

貧乏な生活を送る高校2年生・上杉風太郎のもとに、好条件の家庭教師アルバイトの話が舞い込む。ところが教え子はなんと同級生!! しかも五つ子だった!! 全員美少女、だけど「落第寸前」「勉強嫌い」の問題児! 風太郎は、超個性的な彼女たちを「卒業」まで導けるか──!?

「落第寸前」「勉強嫌い」の美少女五つ子を、アルバイト家庭教師として「卒業」まで導くことになった風太郎。中野父から課された、「全国模試」で風太郎は全国10位以内&五つ子たち全員の赤点回避という試練を見事全員で突破。風太郎は再び五つ子たちの家庭教師として就任決定。そんな中、五つ子たちは風太郎との進展を図るべく大胆に動き始める! 恋の火花散る! 恋愛戦争加熱の「修学旅行」開戦──!!

目次

どう考えても修羅場の予感!

全国模試と赤点回避、2つのハードルをなんとか越えた風太郎を待ち受けるのは、一大イベント「修学旅行」

主人公にはうかがい知れない五つ子の思惑もつばぜり合いの域を超え全面戦争の様相を呈してきて、ヤバい感じに盛り上がってきています。

想いをこじらせヤンデレ風味な行動を見せ始めた一花、ストレートに自分の行為をぶつけて恋のレースにおいてリードをしているような二乃。そしていち読者としてはその健気さを応援したくなる三玖。四葉や五月は表だって風太郎との関係に積極的に踏み込んでくるような素振りはそこまで見えないのですが、普段とは違う非日常な舞台、そしてかつてファーストコンタクトを経た思い出の地である京都で何も起きないはずがないですね。

五等分の花嫁(10) より 目次

まさにシスターズウォー! 1冊まるまる使って描かれる女の戦いにふるえろ!

五等分の花嫁(10) より 虎視眈々と同じ班を狙う姉妹たち

そう、戦いは舞台に上がる前から始まっていたのです。

外堀の埋め方が怖い一花

目的のためには手段を選ばず、ただ風太郎を自分のものにしたいというどろどろとした情念が渦巻いているような一花。

五等分の花嫁(10) より 策士な一花

他者の振りをして自分の気持ちを意識させてみたり、班分けでも無害そう(?)な四葉を巻き込んで3人だけの班を作ろうとしたり、強権的に動くわけではないけれど秘密裏に自分の有利になるような立ち回りを演じている、まさにこの辺は一足早く大人の世界で仕事をして、女優としても活躍する彼女の独壇場なのかもしれませんね。

けれど、彼女のこの風太郎への執着は恋というレベルを通り越して愛憎渦巻く昼メロのような雰囲気。あるいは、恋や愛に酔ったドラマのヒロインを演じているような過剰な印象を受けてしまいます。そして、自分が捧げられるものは何でも捧げようとしてみたり、ものでつろうとしてみたりと打算的な行動も見せたりと、むしろその必死さが痛ましく、恋愛経験も未熟なまま大人の世界を垣間見たせいで、価値観が微妙に歪になってしまったような危うさも感じてしまいます。

五等分の花嫁(10) より 涙は女の武器なのか?

結局、一花の一連の行動は風太郎にも知れることとなり、一番大事な場面で自分の想いを伝える前に信頼を損なってしまうわけで。

ある意味自業自得なブーメランではあるのですが、ここまで風太郎に依存して彼なしでは自分が壊れてしまうくらいの不安定さを見せてしまう彼女は、序盤のお姉さんぶった性格とは別人のようですね。

あるいは長女としての振るまいが身についていたせいで、大人ぶった体面を取らざるを得ず、本来の一花という人間像はこういう脆さもはらんでいたのかもしれませんべ。長女としての役割とかを自分に押しつけ我慢を重ねた果てに、どうしても譲れないものができてしまい、その結果として危うさばかりの行動しかできなかったのだとしたら、彼女のそういった不器用さはなんともやるせなくなってしまいます。

壊れたブレーキで突っ走る二乃

五等分の花嫁(10) より 大胆な告白は女の子の特権

いち早く風太郎に告白して、自身の想いを隠さずオープンに、押せ押せの二乃さん。今巻も絶好調ですね。

第一印象の悪さがあったからこそ、今、風太郎への恋ごころを肯定して恋を叶えるために頑張る姿はいきいきと輝いて見えますね。

五等分の花嫁(10) より 自分の恋を疑わない二乃

そして、自分への自信も持ち続け、正々堂々正面から風太郎を振り向かせてみせると全力疾走。逆にここまで自分の気持ちをまっすぐに示されると他者は萎縮しがちなものなのでしょうが、こと、姉妹同士となるとあまり効果はないようで?

見た目はそっくりでも性格はばらばら。風太郎への好意の示し方もそれぞれのカタチで行っているだけに、誰が一歩先行くかもまだまだ不透明な状況は続きます。まぁ、ここまでストレートに自分のことを好きだと言ってくる二乃を無碍にするのもなかなか難しそうですし、むしろ風太郎の中にある第一印象をベースに築き上げてきた、印象を恋愛要素でどうやったら塗り替えていくことができるのか、その点について悩みは続きそうですね。

五等分の花嫁(10) より 他の誰かが選ばれたとしても…

一方で、恋愛に暴走しているように見えて、自分以外の姉妹のこともしっかりと考えているのが、彼女の根底にある、家族に対する愛情のカタチに思えます。自分の恋が破れることを疑わず前進しつつ、けれど自分以外の姉妹が幸せになるのだとしたら祝福をするという覚悟も同時にしているのが強いですよね。

五等分の花嫁(10) より たとえ恋敵に塩を送ることになるとしても

強力なライバルのはずの三玖を励ます姿を見ても、二乃にとって恋だけが最優先事項なのではなく、姉妹の絆の重さも同じくらいに大切に思っているのだと感じられるシーン、良いですね。

不器用でひたむきな想いを秘めて頑張る三玖

五つ子の関係性を丁寧に描いている本作ですが、本10巻についてはほぼ後半は三玖の独壇場だったのではないかと。良い場面が多くて引用画像が絞りきれません(笑)

五等分の花嫁(10) より 勇気の出せない三玖

元々自分の気持ちをストレートに表現するのを怖がっていた三玖は、二乃とは対照的な関係ですね。恋への姿勢もそうですが、姉妹としての立ち位置も好対照な感じがします。どちらかというと、三玖の方が二乃をうらやましがっている描写だったりがありますが、一方の二乃にしても三玖との距離感というのは端から見ていても気持ちの良いもので、対立するような場面でも、ああ、この二人はこんな風にケンカを繰り返してたんだな、そんな風に思える二人なんですよね。

五等分の花嫁(10) より いくら鈍感でもさすがに気付きます

そして、風太郎を赤面させたのは二乃に続いて二人目? これだけ好意を向けられていればさすがに気付くし、意識もする。恋愛感情に無頓着で、相手の恋ごころを無視するような引き延ばし時期の主人公のような鈍感スキルを発揮しないのは良いですよ。

五等分の花嫁(10) より 恋の戦いは怖いもの

同じ人を好きになる苦しさ、自分のものにしたいという欲求を叶えるということがどれだけエネルギーが必要で、どれだけ勇気が必要なのか、何もかも初めての彼女たちにとっては楽しいことばかりではないのは当たり前で。

五等分の花嫁(10) より 赤面三玖

でも、3日目の映画村での二人はすごい良い感じじゃないですか? いろいろ周りに仕組まれた感が漂うシチュエーションではありますが、せっかくの二人きりのデート(?)楽しめなきゃ嘘ですから。意識しないわけがありません。

五等分の花嫁(10) より はにかみ三玖

そして、こういう控えめな照れ隠し混じりの微笑みも実に彼女らしく、1日目、2日目と悩んだり苦しんだりしていて彼女がようやく報われるターンが来たのだと思うわけですよ。

五等分の花嫁(10) より あなたを知りたい、私を知ってほしい

二乃の言葉に背中を押され、言葉にする、カタチにする、三玖の恋。自分を知って、相手を知って、知らなかったことを知るという喜びを共有することが、彼女にとってどれだけ新鮮な体験だったのか。好きな相手のことを全部知りたいという言葉を目を逸らさずに、勇気を振り絞り風太郎に伝え。そして……

五等分の花嫁(10) より 大胆な告白は女の子の特権Part2

いやー、この流れの告白は素晴らしすぎでしょう。見開きで一言告げる三玖の姿の凛々しいこと、美しいこと。というかここまで直接的に想いを伝えられて「知ってる」と答えられる風太郎のメンタルの強さよ。

五等分の花嫁(10) より 自意識過剰くんと笑われたい

まぁ、色々あってこんなオチになるのですが、これをそのまま額面通りに受け取るような主人公ではないですよね、風太郎。この修学旅行で五つ子との関係も大きく変わってしまった部分もありますが、この先の恋の行方にも目が離せませんね。

ここまで健気な頑張りを見せられるとどうしても応援してしまいたくなりますが、また別のエピソードで別の姉妹が頑張ったりするとそちらを肩入れしたくなってしまうんだろうなあ。今のところ一花がヘイトを集めて割を食ってるような展開ですが、美味しい役どころはまた回ってくるのでしょうか?

五等分の花嫁(10) より 全部、嘘

一花なりのけじめは付いているのですが、このまま風太郎争奪戦の最前線から退いてしまうのかしら?

恋を取るのか家族を取るのか

どうせなら両方欲しいと思ってしまうのが人情ですが、五つ子たちには荷が重い?

五等分の花嫁(10) より まさかのフェイント告白

お膳立てをしてもらった三玖がこういう形で収めてしまうと、ねえ?

五等分の花嫁(10) より 雨降って地固まる、姉妹の絆も…

恋と姉妹の関係は両立しないなんて誰が言いました? 性格も好きなものも違う姉妹に生まれた共通項。これが彼女たちの絆をより強くしてくれると気付けただけでも、楽しいだけでなかった修学旅行の3日間が、後になってかけがえのないものだった思い返す記憶になるんじゃないでしょうか。

五等分の花嫁(10) より 五人の思い出

みんなを応援する四葉・四葉を応援する五月

恋愛方面では前面に出てこない四葉と五月はこれからどう動くのでしょうか? ラストでまた大きな展開を予感させる引きになっていますが、今巻での五月の行動は、自分以外を立てようとする四葉を、なんとか前面に引っ張り出そうとするようなものに思えます。

五等分の花嫁(10) より 四葉にも闇がありそう

そしてその答えは、まだ全てが語られていない、6年前の出会いにあるのは間違いなくて。

思い出の中のあの娘は誰だ?

五等分の花嫁(10) より 零奈

五つ子の誰でもなく誰でもあるというややこしい人物・零奈。なんかだんだんと表に出る頻度が上がってきていますが、現在は五月がメインで演じている様子? それがそのまま過去とイコールで繋がるわけではないのですが、風太郎も見分けが付かないようだし、今と過去が同一人物だとも思っていなさそう。

それぞれが演じる零奈

五等分の花嫁(10) より 誰がどこで出会っていたのか?

五つ子たちの中にある断片的な風太郎との出会いの記憶。誰がいつ零奈として風太郎と会っていたのか、それを考えると大分頭が痛くなってしまいますが、その複雑な出会いの物語が語られるのは次巻に持ち越しということで、そこでまた明らかになる事実が、過去スタートと未来のゴールを見定める材料の一つとなりそうですね。

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