柱稽古で岩柱・悲鳴嶼の元へ赴いた炭治郎。滝に打たれ、丸太を担ぎ、岩を動かすという厳しい修業を経て、炭治郎は悲鳴嶼に認めてもらうことができるのか!? その裏で、無惨は禰豆子と産屋敷の居場所を突き止めようとし――!?
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柱稽古も最終段階
前巻のえらいこっちゃな引きから始まった16巻。岩柱・悲鳴嶼さんの修行は力こそパワーと言わんばかりの過酷なもの。そりゃ善逸でなくても音を上げたくなりますね!
伊之助は滝に打たれて三途の川を渡りかけるし炭治郎もヤバい感じになって……。柱稽古のシーンはホントにきつい修行なんだろうなというのは分かるんですが、その描写が妙にギャグ要素が含まれたりしていて、この殺伐としたストーリーの中でも一服の清涼剤と化しているような気がします(笑)
そんな中でも伊之助の肌感覚は悲鳴嶼さんの強さをビンビンに感じているし、炭治郎の鼻も明確に他者と違う匂いを嗅ぎ取って、鬼殺隊最強の存在であることをアピール。
ただ者ではない感は登場時からありましたが、見てくれイコール強さという等式がなかなか成り立たないという 少年マンガのお約束を覆してくれるようですよ? まぁ、味方陣営の最強カードは相手陣営の最強カードと潰し合うとか、搦め手を攻められて弱体化させられるとか、最強という存在を扱いあぐねるパターンもありますが、この作品の場合圧倒的に鬼側が強かったりするのでガチンコで活躍してくれるシーンが見れたりするのでしょうか?
そして、修行の中で炭治郎が“反復動作”習得の中で思い出しているのが煉獄さんの言葉というのが泣かせます。煉獄さんの存在が炭治郎の中でもとても大きなものになっているというのがよく分かります。何かある度に、煉獄さんのことを思い出しつつ前に進んでいく主人公の姿を見ると、本当に退場が早すぎたと思わざるを得ません。ここから始まる最終決戦での共闘を見ることができたらなんて、叶わないのにそんなことを思ってしまいます。
岩柱・悲鳴嶼行冥の過去
そんな悲鳴嶼さんも鬼に関わってしまったせいで壮絶な過去を背負っていました。それも、家族同然に暮らしてきた身内一人の裏切りによってというのがやるせなさ過ぎます。
鬼だけでなく、鬼のような人間もいたりと救いのないこの世界。そんな経験の果てに鬼殺隊士となり自分にも他人にも厳しく生きてきた悲鳴嶼さんが、当初は疑いまくっていた炭治郎を認め、頭を撫でるまでにいたる。そんな修行の終わりのシーンはほっこりとさせられました。
ラスボス急襲!
修行が終わるのを待っていたかのように状況が急転。というか、この巻で膠着していた鬼殺隊と鬼舞辻との1000年の因縁が一気に進展したような。お互いがお互いの居場所を掴みあぐねていたという停滞がなくなり、どちらもこの機をうかがっていたかのような策の巡らせ合い。ここからのお館様・産屋敷の自分自身を囮にした策略がラスボスを追い詰めていきます。
産屋敷の命を賭した罠
鬼を根本から滅ぼすには始まりの鬼である鬼舞辻を倒すこと。これはあくまで鬼殺隊、あるいは産屋敷の仮説だったのかも知れませんが、鬼舞辻と対峙しカマをかけたことで、おそらくはそれが真実であることを確信。自らを囮にした最後の罠が発動。
前巻で珠世さんを産屋敷邸に招いて協力を申し出たその真意も明らかになります。「鬼を人に戻す」薬の完成。それは炭治郎にとっても宿願でもある研究成果ですが、この場面においてはあるいは必殺の劇薬ともなり得ます。
すでに人でなく、さらには鬼以上の不死性を発揮している、頚を斬っても倒すことのできない鬼舞辻とて、超越した生物から人になってしまえば倒すことはできる。日が昇るのを待つか、薬の効果が出て人に戻すことさえできれば滅ぼすことができる。うかつに単独で乗り込んできた鬼舞辻の慢心を逆手にとって本拠地だからこそできる総力戦でもって、最初で最後のラスボス戦に挑みます。
先にも書きましたけど、単独で攻め込んできた鬼舞辻のうかつさは、結局自信以外の鬼を信じず、忌避さえしているという彼の傲慢さが徒になっているようにしか思えませんね。どれだけ他者を、部下でさえも信用していないのか、自分だけでなんとでもなると思い上がっているのか、ラスボスのくせに抜けない小物臭さ。ちょっとピンチになると域に焦りがにじみ出るあたりが人間だった頃からの器が少しも大きくなっていないのが分かって「まるで成長していない……」となってしまいます。
結果的に敵地のど真ん中で孤立無援になり、さらには虎の尾を踏み逆鱗に触れ、柱の皆さんの殺る気をマックスにさせてしまった鬼舞辻さん、普通ならこのままフルボッコの流れですが……。
鬼舞辻の策略
さすがにそんなことはありませんでしたね。しっかりラストバトルの舞台を用意してくれていました。
新たな上弦・鳴女の能力により補足されていた隊士達は無限城へと転送。どんな罠が待つのやらと思いきや、量産された下弦並みの鬼による物量と、まさに虎の子の残された上弦による柱の各個撃破。あれ、あんまり無限城に飛ばした意味がなくないですかね?
そして、神も仏も存在を否定しておきながら、地獄を肯定する無惨様。このちょっと余裕が出てくるととたんに人間くさくなるラスボス、いったい最後の最後はどんな表情を見せてくれるのやら。
十二鬼月・上弦の鬼との決戦始まる
当然、無限城で待ち受けるのは鬼舞辻無惨側の最強戦力、上弦の鬼の残り壱・弐・参とどう考えてもチート級の鬼たち。少年マンガらしく分断された味方勢と、敵の中ボスの個別戦闘が展開されるわけですが、そもそも鬼同士が共闘したりというのを鬼舞辻の小心のせいで禁じられているので、多対一の戦いとなりますが、まぁ、これまでのバランス調整ミスったような戦力バランスを考えると、ねえ?
胡蝶しのぶ因縁の上弦の弐・童磨と対峙す
予想通り(?)しのぶさんは十二鬼月との因縁ありでしたね。笑みを絶やさず得体の知れない強者の雰囲気を漂わせる上弦の弐・童磨。カルト宗教の教祖を装いながら人を喰らう鬼という、人の世に近い場所に居ながら決して相容れない異常そのもの。
人間だった頃の童磨も人間らしい感性とは縁遠くて、なまじ生来持っていた天才性を間違った方向に発揮してしまったような狂人のような描写ですね。子どもの頃、親をはじめとした大人たちが、彼を担ぎ上げてしまったせいで勘違いしたようにも取れますが、彼は冷静に独自の理論で人を救うという体で食い物にしてきた人外ですね。
もう、俺理論で生きてるだけに、相容れることができない感がバリバリです。こんな相手に、鬼を斬ることのできない蠱柱は独自の毒を用いた戦術で倒そうとしますが、ことごとく無効化。おい、犯則にも程がある。そして……
あああああ……致命的な一撃をもらって息も絶え絶え。結局最後は力なのかと心折れそうなときに現れたのは。
しのぶさんの姉の姿。優しかったはずの姉の厳しい言葉。おそらくそれは自分が自分に科し続けた言葉の形で。どんな犠牲を払っても童磨を倒すという覚悟が折れそうになったときに、他の人の思いが奮い立たせてくれる、一人で在り続ける鬼とはまったく異なる在り様の人間の強さがここに在ります。鬼が不要なものと断じ捨て去ったものが力となる、それはまさに産屋敷が見た人間の強さそのものなのでしょうね。
決死の一撃は届くのか!?
死力を振り絞って放った最高最後の一撃が童磨の一撃を上回り突き刺さる。自分の命と引き換えにするようなこの一撃はきっと、かつての姉を上回るものだったに違いありません。
ここぞという場面で次巻に続いて、17巻発売は10月と当分先ですよ。これは生殺しだー。
シリアスな善逸の様子も気になります
修行終盤でいきなりシリアスモードになった善逸。その理由も次巻で明らかになることでしょう。これまでギャグキャラだったのに一気にシリアスな空気を纏うと逆に心配になりますよ。これ、寝てるわけじゃないですよね……?
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