灼眼のシャナ〈22〉

このページは約 5分50秒で読めます。

stars 天下無敵の幸運を、『炎髪灼眼の討ち手』――シャナ

“徒”の理想郷『無何有鏡ザナドゥ』創造を巡り、“祭礼の蛇”の代行体・坂井悠二と、フレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』シャナが、刃を交えていた。
その渦中、琥珀色の風が吹いた。
吉田一美が、宝具『ヒラルダ』へ願った想いを受け、“彩飄”フィレスが戦場に現れる。
一大決戦の舞台となった御崎市は、この転機と共に、激動を経て終幕へと向かう。
フィレスを呼んだ吉田。
生け贄のヘカテー、ほくそ笑むベルペオル、『真宰社』を支えるシュドナイ。
襲来する“徒”を屠るカムシン、上空に舞うヴィルヘルミナ、そこへ向かうマージョリー。
そして、対峙するシャナと悠二。
人間、“徒”、フレイムヘイズ。彼らが向かう先が、今ここで決まる。すべては、悠二とシャナの決着の行方にゆだねられていた――。
最終巻、ついに登場。

まさに大長編と呼ぶに相応しい作品の終幕でした。

20巻以上にわたる物語の最終局面。ストーリーの大転換となった悠二の決断の本当の意味がようやく明らかになって、彼のシャナたちと敵対し、多大な犠牲を払ってまで実現しようとした願いの真の形がつまびらかになります。

いやぁ、しかし、悠二というキャラクターは、途中から別人になったのではないかと思うくらいに成長、あるいは変身したように思えますね。考えてみれば、彼が敵である“祭礼の蛇”を身のうちに宿してまで実現しようとした思いを支えた信念というのは、別の側面から見ればもしかしたらフレイムヘイズたちが“徒”たちを討伐するための拠り所となる思いに似ているのかもしれません。

まだ、彼女自身の名を持たず『炎髪灼眼の討ち手』という討滅のための人形然としていたシャナがそうであったように、物語終盤、シャナと刃を交えることさえ受け入れた悠二の中にあった覚悟というものはそれこそ、世界を敵に回してさえも揺るがないほどの重みを持っていたのでしょうね。そして、シャナがシャナとして悠二と時間を共有して変わっていったように、悠二もまた彼が望むたった一つの幸せのためにこんな途方もない計画を練り上げ、実行に移したと。

いやいや、色恋沙汰は惚れたら負けとはいいますが、ちょっとこの相思相愛の二人、気持ちのぶつけ方が下手すぎてこじれてしまって、世界を巻き込んでようやく結ばれたって感じがしますね。もちろん、お話として伏線をきっちり回収して、これまでの謎を解決しつつ、風呂敷を畳んだのは、まこと、お見事ではありますが、悠二の頑なさを和らげるためのシャナの言葉が、あのクリスマスのときに届いていたのなら、また別の未来を見ることもあったのでしょうか。

そして、主人公たちの結末に対してもいろいろ語ることができると同時に、物語を彩ってきたサブキャラクターたちも様々な形で決着を見せてくれましたね。敵も味方も誰も彼もが自身の望むまま戦い、勝ち、あるいは敗れて物語の舞台から去っていきました。二陣営の大決戦以来、群像劇的な側面が強くなり、多くなりすぎたキャラクターの把握に苦労しましたが、本巻で描かれたキャラクターたちは、物語序盤から付き合いの長い者たちも多くて、印象深いシーンが多かったですね。

特に、敵方の難敵、シュドナイの最後の戦いとその果ては、彼の在り様がどのようなものかを端的に表していましたね。結果的にヘカテーの後を追うような形になりましたが、けれど、それは自殺などではなく、彼自身の矜持に準じた戦いの結果の一つという、終わりではなくあくまで一区切りという辺りが死んでも死なない彼の強さの現れだったと思います。

もちろん、シャナを支えてきたヴィルヘルミナやマージョリーたちの選択もまた同様に。満足して逝ったカムシンや次代に希望をつなぐための存在もまた、この物語の先にある未来に繋がっているのでしょう。

物語をかき回すトリックスターのような存在だった『約束の二人』の大望は、これもまた時代の転換を象徴するような出来事なんでしょうね。本来ならあり得ないはずだった『両界の嗣子』を世界に託していったことは、すなわち人間、フレイムヘイズ、“徒”のいずれにとっても、変化に繋がっていくのでしょう。

それはきっと、ミステスという人外の存在である悠二にとっても、フレイムヘイズという人外の存在であるシャナにとっても、思いを繋いだその先に、子を成す可能性を示したということなのだと思いました。だから、悠二は自分自身がこの世界から消えてしまっても、新しい世界を何百年と歩んでゆける。だからシャナもまた、思いを揺るがせず彼と共に歩んでゆける。

物語のエピローグとしては、これまでの友人たちとの別れや、残された者たちの悲しみといった癒しきれない傷は残るものの、決して悲壮ではないのだと感じます。

小さな変化を積み上げ、大変革ともいうべき結末まで至った物語。当初はここまでスケールが大きくなるとはとても想像してはいませんでした。短編集を1冊残してはいますが、まさに大団円を迎えたこの壮大な物語の完結に惜しみない拍手を。そして、これからもそれぞれの未来へ向けて歩んでゆく彼らに幸多かれと祈りを捧げたいと思います。

hReview by ゆーいち , 2012/01/08

photo

灼眼のシャナ〈22〉 (電撃文庫)
高橋 弥七郎 いとう のいぢ
アスキーメディアワークス 2011-10-08

    スポンサーリンク

    Trackback URL

    No Trackback to 灼眼のシャナ〈22〉

    Still quiet here.

    Comments are closed.