冴えない彼女の育てかた2

2012年11月24日

stars 教えてくれ、神様。俺はどうすればいい? あと何回こういう状況を彼女と繰り返せばいいんだ? CER○は何も答えてくれない……教えてくれ、神よ!

紆余曲折を経て、動き出した我らがゲーム制作サークル。ついに俺、安芸倫也のクリエイターとしての栄光の日々が始……「何言ってんの、今月末までにキャラデザなんて無理!」「時期が悪かったわね。ちょうど新作の執筆に取りかかってるの」「や、約束したよな二人とも?ちゃんと俺のゲーム制作に協力してくれるって!」「確かにやるとは言ったけど、まだその時期の約束まではいてないでしょ?」「つまり、私たちがその気になればゲームの完成は10年20年後ということも可能だろう、ということ」「どうやってゲーム作るのこのサークル!?」
メインヒロイン育成コメディ、いきなり波乱の第2巻!!

[tegaki font="crbouquet.ttf" color="DarkOrange" size="36″ strokesize1="6″ strokesize2="8″ strokecolor2="DarkOrange"]共通ルート進行中![/tegaki]

ギャルゲーでいうなら、前巻がプロローグとすれば、ようやく本編共通ルートが始まったという感じ。登場人物たちの顔見せも終わり、目的に向かってレッツ前進! といくわけないのもお約束。相も変わらず、想定年齢高めのパロディネタに笑わせてもらいながら、物語が転がり始めてきましたかね?

いやぁ、1巻では登場人物たちの行動を眺めている感じだったんですが、今巻はみんながみんな、自分の考えに従って動いているのがよりはっきりと伝わってきて面白いですね。

運命的な出会いをした、と確信したまま、加藤さんをヒロインにしたゲーム制作サークルをようやく立ち上げることができた倫也。けれど、彼の残念さは今回もいかんなく発揮され、割と丸投げな感じがなんとまぁ……。作中の「分かりやすいサークル瓦解の法則」をまんまなぞるような悪条件を積み上げながらも、自分以外は超有能なクリエーターを揃えたこのサークル。プロデューサーとしても半人前な倫也の甘い考えを打ち砕くような英梨々と詩羽先輩の言葉が痛快で、そして刺さるっ! うわぁ、痛い、痛いよ。なんか身に覚えのある人が少なからず存在しそうなケーススタディ。冒頭から別の意味で身悶えさせるテキストをぶちかます丸戸さすがきたない!(笑)

にしても、本作のヒロイン? って「ハテナ」を付けたくなるような印象だった加藤さんは、今回はかなりヒロインしてるんじゃないですかね? 危うく倫也も、ころりと転んでしまいそうなくらい、かわいいじゃないですか。だれだ、残念だとか言った奴は。というか、こんな可愛いくて付き合いが良くて、それなりにオタクの相手をしてくれる加藤さんをリアルで攻略しようと思わないとかとんだチキンですねえ、倫理君。彼の思考もまた、どこかでブレーキが利いているのか、あるいは妙に律儀なのか図りかねるところではありますが、今回は表紙を飾った詩羽先輩との過去を見る限り、妙に堅物な所もあるみたいで……。

ええ、詩羽先輩ですよ、先輩。もうね、表紙のイラストを見るだけでもムッハァとかなってしまいそうな素敵な黒ストを披露して下さいますが、口絵はさらに衝撃的。うぉい、このどう見ても事後なイベントCGはなんですかけしからん! こりゃあ、本編も期待せずにはいられないと思ったら、ラストページの挿絵で大爆笑。うはは、これは見事な罠。先輩はやはり一筋縄ではいかない強敵。まさか、こういう手を使って既成事実化を狙ってくるとは。これまでの言動を見る限り、先輩はかなり本気で倫也にハマってるといってもいいんでしょうね。からかい、煽って、時には上げてから落とし、いじりまくっていながらも、彼の力にできる限りなろうとする(ただし自分の余裕があるときに限る(笑))なんて、いじましいし羨まけしからん。そして、倫也がファントして彼女に接してきた時間の長さが、逆に彼女にとっては特別な時間だったことは疑いもなくて。彼女が彼女なりに倫也を喜ばせようとした行為が、倫也に取ってみれば許せなかったという作家とファンであったが故にうまれた断絶。それを引きずりながらも、まだ彼との関わりと捨てきれない、詩羽先輩、まさに丸戸ヒロインですね。面倒そうな所もあわせて素敵です。そんな彼女が、倫也のサークルに入り、ライターとして腕を振るうことで、彼を強引に自分と同じ創作側の人間にするという荒技。彼からの提案はある意味で渡りに船だったのかもしれませんね。一緒にいる時間が増え、さらに密度の濃い時間を共有できるようになる。だけど、彼にはすでに別の本命がいた、っていうのが間が悪いところですが。

でも、そういう部分も含めて、このサークルの人間関係は面白いですね。幼なじみで、けれど長い時間の断絶を経て再び一緒に活動することになった英梨々もそうだし、影が薄いながらも倫也に影響を与え続けているメインヒロインの加藤さんも、空気を読みまくりながらも、少しずつ倫也を意識してきている気配もちらほら。なんだかんだで、こういう主人公に惚れてしまったら後はもう転がり落ちるだけ、な展開が待っているわけですが、いったいこの先どんなイベントが待ち受けているのか。

詩羽先輩がとんでもない切り札を手に入れてしまった気がしますが、英梨々を中心にしたエピソードは次に来るんでしょうね。今回はキャラの設定などが作られたという結果で終わりましたが、次はビジュアル方面でゲームの設定を煮詰めていくという感じで、ゲーム制作と人間関係が同時に進行していく構成になるのかしら?

蚊帳の外ながらも所々で倫也をはっとさせる加藤さんにも、もっと出番を与えてほしいですし、こりゃあ、確かに先輩が言うように誰を選ぶかの結論は最終巻まで引っ張るというメタ展開あるでぇ!?

次巻、早く次巻を出してくれ!!

hReview by ゆーいち , 2012/11/23

冴えない彼女の育てかた2

冴えない彼女の育てかた 2 (富士見ファンタジア文庫)
丸戸 史明 深崎 暮人
富士見書房 2012-11-20