明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。〈2〉

2013年6月15日

stars おまえのそばにいてやれないのが悔しいよ。なんでこんなに遠いんだろうな。でも、どれだけ遠くても、おまえはひとりじゃない。だから泣くな。泣かないでくれ。必ず、俺がたすけてみせるから!

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。〈2〉 書影大

ある事故で死んだはずの少女・夢前光の人格が、1日おきに俺の体を乗っ取るようになって約3ヶ月。超おバカ少女と二心同体生活を続ける俺は、彼女と唯一会話できる交換日記で衝撃の事実を知る!
『坂本くん! い、妹ちゃんに彼氏が!』
なんだと? しかし、なぜか妹は膝を抱えて半泣き状態。プンプンと実に不機嫌な様子……。う~ん、わからん。
そんな夏休みの朝、事件は起こる。いつもより5分早くやってきた2人の人格入れ替わりタイム――それは、夢前光が生き返っていられる時間が5分減っているという残酷な事実を意味していた……。
いつでも背中合わせな俺とあいつの、人格乗っ取られ青春コメディ第2弾!

衝撃(笑)のラストに続く第2巻。あれを越えるのは大変だろうなあと期待値高めに読んでいたら、期待以上に面白かったですよ。こりゃすごい!

ふとしたことから二心同体の生活を送るハメになった主人公・秋月と、ヒロイン(?)・光のドタバタ生活。とどまることを知りません。なに、あの、微妙に感動的な前巻の引きはどこ行ったの? 相も変わらず光は自由気ままフリーダムに第二の人生満喫してるし、妹ちゃんは兄へのストーカー行為を継続中。いい感じに彼女候補かと思われたかすみちゃんは、越えちゃいけないラインを余裕で踏み越えて微妙にヤンデレ化する始末。そして、親友ポジションに収まるかと思ったら、風城くんは全力でBLフラグを立てようとしてるしなにこのカオス、楽しい!

そして、今回は妹ちゃんの彼氏騒動に、光が入れ込む悪女な後輩ちゃんまで登場。なんだかんだでドタバタ続きの毎日は、けれど、光が秋月の身体に残っていられる時間が減り始めていることから少しずつシリアスの度合いを増していって。

と、思ったけどやっぱりこの作品、そんなシリアス一辺倒で終わるわけがない。二番煎じと言われるかも知れませんが、「まさか、またか?」なんて思いの方が強かった(笑) 今回もドシリアスな流れを強いておきながら、そのオチが妙に脱力するというね。覚悟ができていたといえばそうなですが、まさかこういう方向に転がるとは、読めない、光の行動ばりに読めません。

でも、お話を通して見ると、割と一本芯は通っている印象。光の残された時間がどれくらいか分からないという状況の中で、彼女が自分の心残りを、精算しているのだと思うと、斜め上の行動にも理由を付けたくなるんですよね。妹ちゃんの彼氏騒動で、彼女を応援しようとしたりとか、後輩ちゃんが魔性の女を演じているのを見て見ぬ振りで助けてみたりとか、そこには、夢前光という少女の、優しさが確かにあるんですよねー。その優しさの表現の仕方が常人の理解を超えているという欠点はあるけれど、それを理解しようとする秋月の奮闘もまた見ていて楽しい。まさに愛ですな!

まぁ、そんな秋月の奮闘も、空回り気味ではあるんですが、あるんですが! 決め台詞してドヤァと言った次のページでご覧の有様だよには正直吹いた。さすが光、期待を斜め上で裏切ってくれる、そこにしびれる憧れるッ! そんな行動も、ここまで付き合ってきた秋月も読者も、彼女の弱さ、照れ隠し、そんなものがあるせいだと分かっているんですが、ことごとくお約束を外してくれる、このヒロイン新しすぎます(笑)

なんだかんだで、秋月の気持ちも気付いたり、近くて遠い二人の気持ちは、それだけは重なりつつあるようなんですが、この生活から抜け出す手がかりとか果たしてあるんでしょうか?

エピローグで次巻へ続く中、突き付けられる致命的な二者択一は果たしてどんな意味があるのか。ただの戯れ言なのか、それとももっと重い意味を持っているのか、どうにもこの作品、シリアスで落ちるわけがないと思っていると今度はその裏をかかれそうで油断できません。

が、やっぱり面白い。クライマックスの予感を感じますが、下手な引き延ばしもせず綺麗にまとまったらなかなかの名作になるような気がしてなりませんよ。

hReview by ゆーいち , 2013/06/11

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (2)

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (2) (電撃文庫)
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