雪が綺麗ですね。
こんな落ち着いた気分で雪を見上げるなんて、すごく久しぶりです。
これも、あなたのおかげですね……。
祐一さん。
-Short Short Happiness-
『the Worth』
時間が経つのを忘れてしまうくらい、この一年は早かったです。
本当に、色々なことがありました。
嬉しかったこと。
悲しかったこと。
楽しかったこと。
悲しかったこと。
そして……。
あなたに出逢えたこと。
こんな幸せな出来事が、私に起こるなんて、去年までの私だったら想像もしなかったでしょうね。
泣くこと、絶望すること、そんなことしか出来なかった弱い私。
そして。
諦めないこと、くじけないことを教えてくれた、常に強くあり続けたあなた。
不思議ですね。
私があなたに逢えたこと。
私があなたに惹かれたこと。
あなたが私に逢えたこと。
あなたが私を愛してくれたこと。
不思議ですね。
短い時間に出逢って、こんなにも惹かれ合うなんて。
まるでドラマのようです。
すごく幸せなドラマの主人公とヒロイン。
ちょっと格好いいですよね。
でも、それ以上にとっても幸せです。
幸せすぎて恐いです。
そんなこと言うと贅沢ですよね。
とっても幸せです。
ありがとうございます。
祐一さん。
季節はゆっくりと巡って行きます。
私はやっぱりこの厳しさと優しさを届けてくれる冬が好きです。
たくさんのひとの暖かさを教えてくれたこの冬が好きです。
春も、夏も、秋も。
巡り来るすべての季節が、今は大切な大切な時間。
想い出になるのに時間なんて関係ありません。
一緒にいて想ったこと、感じたこと、すべてが私には大切な想い出になるんです。
ほら、きっと……。
こうしている今だって。
この雪の白さ。
この風の冷たさ。
この夜の闇の深さ。
この街の灯の明るさ。
素敵ですよ。
きっと素敵な想い出になるんでしょうね。
でも……。
あなたは、何をしているんでしょう……。
今日がなんの日か……。
忘れちゃったんでしょうか……?
「し~おりっ」
ぽんっ☆
突前後ろから肩を叩かれました。
こんなことするひとは。
私、ひとりしか知りませんよ? 祐一さん。
「わ! いきなりなんですか、祐一さん」
もうっ、遅すぎですっ。
私だって怒っちゃいますよ。
「遅すぎます、祐一さん」
「ままま。そう怒るなって、ちょっと遅れただけだろ?」
「ちょっとでも、遅刻は遅刻です」
ちょっとだけ意地悪をしちゃいます。
か弱い女の子を待たせた罰ですよ。
「いや~、百メートルを七秒で走れば間に合うと思ったんだけどさ」
「走れるわけありませんっ」
「そりゃそうだわな」
「風邪引いちゃったらどうするんですか?」
「いや、お前って薬類で完全武装だろ……」
「最近は前の半分くらいしか持ってないんですよ? 足りなくなったらどうするんですか?」
「半分って……」
でも。
やっぱり祐一さんの顔を見たら、怒る気なんてすぐにどこかへ行っちゃいます。
やっぱり、嬉しいです。
やっぱり、楽しいです。
やっぱり、幸せです。
「冗談ですよ」
「たく~……」
「でも、今度遅れたら冗談じゃ済みませんよ?」
「わ、分かった……」
「いいお返事ですっ」
「はぁ……。せっかくプレゼントも用意してたのにな~」
「わー。嬉しいですー」
「でも、栞、怒ってるしな~」
「怒ってませんよー」
「ホントにホントか?」
「ホントですよー」
「じゃあ」
ちゅっ☆
「……っ」
……
……
「ゆ、祐一さんっ!」
「どわっ!」
びっくりしました。
いきなりなんてズルイです。
「どうして、いつもそういきなりなんですかっ!?」
顔が真っ赤に染まって行きます。
大好きなあの人の顔が、少しだけ意地悪に見える瞬間。
「もうっ、嫌いですっ」
「お、俺が悪かったっ!」
「謝ってもダメです」
「機嫌直してくれよ~」
「祐一さん、嫌いです」
「ほら、ホントのプレゼントもちゃんとあるからさ~」
……
「わー、祐一さん、大好きですー」
「はは……」
引きつった笑顔がなんだか気になりますけど、プレゼント嬉しいから許しちゃいます。
「そうだ、忘れてた」
「?」
「秋子さんが、料理作って待ってるんだよ。みんな呼んでパーティしようって」
「楽しそうですね、行きたいです」
「ふたりっきりでっ、てのはまた今度になっちまうけど……」
「うー、ちょっと残念です」
「ま、名雪も香里誘ってたみたいだし、盛り上がるだろ?」
「……そうですね。じゃあ、お邪魔します」
雪が勢いを増して来ました。
明日はきっと真っ白な雪景色。
楽しみです。
雪だるま、みんなで作れるといいですね。
時間なんてきっと関係ないんです。
「よし、それじゃ走っていくぞ! 遅れるなよ、栞」
幸せな瞬間が想い出に変わるのに。
「あ! 祐一さん、その前に……」
大切なのはきっと私たちの心。
「……そうだな」
そうですよねっ。
「「メリークリスマスっ」」
fin.
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