あ~、面白かった。3巻が1巻の焼き直しに近かったので、今回もそんな展開だったらどうしようかと思ったけど。
いや、実質的には物語の起承転結はこれまでのシリーズと大きくかけ離れたものというわけでもなく、安心して読める──逆にいえば驚きの少ない──展開であったといえます。
大きく違う点があるとすれば、本巻の主人公がタズサではなく、妹のヨーコであるということですか。良くも悪くも世界的に有名となりすぎた姉を持つことの劣等感や、すぐ側にある越えられない壁への焦り、密かに思いを寄せている彼が他の女性に見せる言動への嫉妬など、心情の描写がなかなかよろしかったのではないかと思います。
もちろん、メインとなるフィギュアシーンの描写は手慣れたもの。静と動を見事に描写しきってくれるので、やはり、ラストの演技は非常に魅力的に映るのです。
もう一つ、姉であるタズサが妹に向ける「分かる人だけ分かればいい」タズサ自身というのも、ヨーコの視点から描くことで、タズサのもう一つの側面を魅力的に伝えてくれます。なんだ、口は悪いし、性格も悪いけど、いいヤツなんじゃん、て感じで。
そして、マセた子どもだと思ってたヨーコを主人公に据えるだけで、また違った銀盤カレイドスコープの世界が拡がる、その一点を取るだけでも、本巻は前巻の不満を払拭するに足る満足を得られるものだと思えるのです。
あ~、微妙に下ネタ的なコメディシーンが入ってるのはご愛敬かな。いや、ああいうのも、悪くはないのですが、少しノリ過ぎですか(笑) うん、ラストの告白シーンがきれいに決まってるだけに、やはりあそこはもう少しソフトにおさえても良かったんじゃないでしょうか。
コメント