世界にたった一人残された少女と、一匹の犬と、五人の家族と、そして。
設定だけ見ると最初から絶望的な状況下でのストーリーに思えますが、序盤はホームドラマテイストで進むので、彼らの境遇を思い煩うこともなく、さくさく読み進められます。
が、終盤、唐突に世界が激変。そこに至る情報の提示が、かなりなレベルで不足しているので、やや置いてけぼりな感じのまま終了してしまいました。
上下巻構成にしてじっくりと書いてほしかったなぁ。電撃大賞受賞とか、どの辺が評価されたのか正直疑問ですわ。
とにもかくにも終盤の描写不足が残念です。ようやく物語が動こうという時点で、終了ですから。寂寥感を煽るという点では悪くないのですが、あっさりしすぎだったのかなぁと。
本作の主観となる彼の一人称で進む文体は、序盤は気になりつつも納得できる表現でした。面白い。しかし、SFとしてもオカルトものとしても、設定のディテールがぼやけてしまっている印象で、どっちつかずだったのではないでしょうか。
本当は、彼らの家族としての物語が見たかったのですね、私は。それが最大の不満です。
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